企業スポーツ選手の労働と引退後のキャリアとの関係性

要約

中村 英仁(一橋大学准教授)

本稿では企業スポーツ選手の労働がどのようなものか、そのような労働者の人的資源をいかに管理しているのか、またそうした実態が引退後のキャリアにいかに影響するのかを検討する。企業スポーツ選手の現役中における業務とトレーニングとのバランスが、引退後そのまま同一企業で就労することに影響すると先行研究では指摘されてきた。しかしその関係が実際に検証されることはなかった。本稿では、2014年度に実施された、国内トップレベルにある69の企業スポーツチームに対するアンケート調査の結果を基にして、企業スポーツにおける選手の一般業務労働およびスポーツ労働、そしてその管理の実態を明らかにする。またそうした実態把握をした上で、企業スポーツの労働における諸要因がいかに引退後のキャリアに影響するのかという点について、統計的手法により探索的に分析する。分析の結果、次の3点が明らかになった。第一に、一般業務に従事する時間や研修内容を一般社員と異なるものにしても、そのことで必ずしも引退3年後の継続就労率が悪くなるわけではない。第二に、昇給・昇進基準を一般社員と異なるものにすると、引退3年後の継続就労率が悪くなる。第三に、またチームの年齢および性別も引退3年後の継続就労率に統計的に有意な影響がある。この分析結果を踏まえ、企業スポーツ選手の人事労務管理において、労働時間、人事評価および教育訓練に加え、歴史や性別といった要因を考慮する必要性について議論する。

2017年11月号(No.688) 特集●スポーツと労働

2017年10月25日 掲載