企業スポーツの現在を考える――変化する経営課題と企業スポーツの展望

要約

佐伯 年詩雄(日本ウェルネススポーツ大学教授)

企業スポーツをめぐる議論は一段落したかのようであるが、それは解決の道筋が示されたことを意味しない。確かに、企業業績の好調と五輪におけるスポーツ成績の好調によって、危機は回避されたかのように見える。しかし、休廃部は引き続いており、危機論を超える企業スポーツ論議が必要である。なぜなら、危機論では常に後手の理論となり、変化する経営課題に対応することはできないからである。本稿では、企業スポーツの歴史を福利厚生の職場スポーツ、組織の誇りやブランドの担い手としての企業スポーツ、そして広告宣伝事業としての企業スポーツ、崩壊から新たなモデルの提案の4段階でとらえ、これまでの企業スポーツの意味・機能を経営資源の視点で整理する。そして、経団連の「企業のスポーツ支援活動に関する調査報告」及び笹川スポーツ財団の「企業スポーツの現状」調査から企業スポーツの現状をとらえ、その特徴を整理する。さらに、グローバル化する経済環境の中で日本企業が直面している新たな経営課題として「組織力開発」を取り上げ、企業スポーツの新たな可能性を検討する。その結果、企業スポーツは、これからの組織力開発に必要な、多様性の包摂、主体的な参与、豊かなコミュニケーション、組織のグローバル化、そして「学習する組織」の5つの特性を有しており、これからの経営戦略にとって大きな可能性を持つ経営資源であることを論じる。

2017年11月号(No.688) 特集●スポーツと労働

2017年10月25日 掲載