「新しい」大学教育─コンピテンシーに基づく教育(CBE)の実践

要約

青木 久美子(放送大学教授)

本稿の目的は、従来の大学教育にみられる授業時間に基づく単位認定の考え方から大きく方向転換を強いられる「新しい」大学教育の仕組みであるコンピテンシーに基づく教育(Competency-Based Education, CBE)の考え方を紹介し、それがどのように従来の教育の仕組みとは異なるのか、CBEの特徴と背景、そして、CBEを先駆的に行っている米国における取り組みを紹介し、時代のニーズに合致した大学教育を再考するきっかけを提供することにある。20世紀初頭に米国で導入されたカーネギー・ユニットと呼ばれる授業時間に基づく単位制度は、日本の大学教育にも戦後導入され、大学教育の様々な側面における共通通貨としての役割を果たしてきたが、それ故に、大学教育の空洞化を生み、抜本的な改革を迫られている。CBEは、あらかじめ定義されたコンピテンシー、即ち、知能・技能・態度、を個々の学習者にあった方法やペースで修得し、それを認定するものであり、授業時間ではなく、学修成果を評価するものである。コンピテンシーを適切に客観的に評価するためには、コンピテンシーを定義し、それを可視化したルーブリックが必須であり、米国の専門分野の学会や教育団体が、CBEのためにコンピテンシーを定義して、評価のためのルーブリックを開発している。また、米国連邦政府は、CBEプログラムを連邦奨学金制度の対象とする試みを始めており、そのプロセスに関して我が国においても学ぶところが大きいと考えられる。

2017年10月号(No.687) 特集●大学教育の「実践性」

2017年9月25日 掲載