大学教育需要を考える

要約

田中 隆一(東京大学教授)

本稿は、高等教育機関としての大学に対する直接的な需要者である大学進学希望者のうち、最大のシェアを占める新規高校卒業者の四年制大学進学決定要因を実証的に調べることによって、これらの大学教育の需要者が大学教育に何を期待して進学しているのかを考察した。また、大学進学者の文理コース選択についても分析し、社会状況の変化に対応した人材育成を図る上で重要な要因は何かを探った。東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センターで2005年から2011年までに実施した「高校生の進路についての調査」を用いて四年制大学への進学決定要因をプロビット分析により調べたところ、今までの学業成績や父親の年収および学歴が四年制大学進学の決定要因になっていることが確認された。また、大学教育の期待収益や、将来の仕事選択において重要視する項目も四年制大学への進学と統計的に意味のある関係を持っており、四年制大学進学決定において将来の就業機会が重要視されていることがわかった。さらに、四年制大学における文理選択の決定要因を調べたところ、親の学歴や所得に加えて、専門技能を活かせる仕事や人の役に立つ仕事につくことを希望する学生ほど理系学部を選択する傾向があることがわかった。これらの分析結果を受け、今後の少子高齢化や社会経済的状況の変化が大学教育需要に与える影響についても議論した。

2017年10月号(No.687) 特集●大学教育の「実践性」

2017年9月25日 掲載