発達障害者の就労上の困難性と具体的対策─ASD者を中心に

要約

梅永 雄二(早稲田大学教授)

本研究は、アスペルガー症候群を中心とするASD者の就労上の困難性と具体的対策についてまとめた。発達障害者の中には、読み・書き・計算が不得手なLD、不注意・多動・衝動性で定義されるADHD、対人関係およびコミュニケーションが苦手で独特のこだわりを持つASDが挙げられるが、どの障害もいまだ十分に認知されているとはいえない。そのため、就労の側面でも障害者としての十分な就労支援がなされていない現状である。中でもASD者は、高学歴で知的にも高く、仕事そのものの能力であるハードスキルは十分に所有していても、職業生活遂行能力と呼ばれるソフトスキルに困難性を抱えている者が多い。彼らの就労上の課題は、適切なジョブマッチングがなされていないこと、職場の同僚上司がASDに対する理解が進んでいないこと、彼らの特性に合った職場の合理的配慮がなされていないこと、そして就職後のフォローアップが十分でないことなどが報告されている。よって、ASD者の就労支援者は、従来の伝統的な職業リハビリテーションサービスでは限界があるため、ASD者に特化した職業リハビリテーションサービスが必要である。具体的には、職業カウンセリングの段階では自己理解を促すためのチェックシートによるカウンセリング。職業アセスメントでは、実際の企業現場における実習でのソフトスキルのアセスメントとそれに伴う合理的配慮と適職マッチング。就職する企業におけるオンザジョブトレーニングと同僚上司に対するASDの理解啓発。最後に、就職後の職場定着を図るためのASDチェックリストによるフォローアップ支援などが必要であるとまとめられた。

2017年8月号(No.685) 特集●障害者雇用の変化と法政策・職場の課題

2017年7月25日 掲載