法定雇用率制度の比較法的考察─ドイツ法を参考として

要約

小西 啓文(明治大学教授)

日本では、障害者に対する差別禁止・合理的配慮措置の義務付けと並び、障害者の雇用を促す法定雇用率制度も引き続き維持・拡充されている。この点に関わり、英国のように、雇用義務制度を廃止して差別禁止法を用いた障害者の雇用保障に舵を切った国が存在する一方で、差別禁止・合理的配慮措置の義務付けと法定雇用率制度をリンクさせるフランスのような例も存在する。これら両者の関係は排他的関係とみるべきであろうか、相補的関係とみるべきであろうか。この点については各国の障害者雇用法制でいまだ結論は出ていないものと思われるが、本稿ではドイツ法との比較を通じ、法定雇用率制度につき検討を加える。本稿は上記のような問題関心に基づき、ドイツの法定雇用率制度を、社会法典SGB第9編のうち、とりわけ重度障害者の概念、雇用義務制度、調整交付金制度、統合プロジェクトという4つの観点から紹介することにする。そして、このような検討を踏まえて、わが国において法定雇用率制度が、障害者に対する差別禁止・合理的配慮措置の義務付けと並置されていることについて、障害者政策の「パラダイム転換」論を参照しつつ考察する。

2017年8月号(No.685) 特集●障害者雇用の変化と法政策・職場の課題

2017年7月25日 掲載