障害者差別禁止・合理的配慮の提供に係る指針と法的課題

要約

石﨑 由希子(横浜国立大学准教授)

障害者雇用促進法における雇用義務制度の下、障害者は、「保護の客体」として位置づけられてきた。障害者権利条約の批准を契機としてなされた2013年の障害者雇用促進法の改正は、障害者であることを理由とする差別の禁止と事業主に対する合理的配慮の提供を義務付ける規定を導入し、障害者を新たに「権利の主体」として位置づけた。こうしたパラダイムの転換がなされたなかで、事業主が適切な対応をできるようにするため、改正法施行(2016年4月1日)に先立ち、差別禁止指針及び合理的配慮指針が策定・告示された。このうち、特に、合理的配慮指針は、事業主、障害者、同じ職場の従業員間の対話を促進し、これにより働きやすい環境を整備する重要な機能を有している点で注目される。もっとも、①差別禁止規定との関係で、職務遂行能力に基づく異別取扱いや積極的差別是正措置や合理的配慮措置と結びついた不利な処遇をどのように考えるべきか、②合理的配慮はいかなる範囲で認められるか(合理的配慮措置の提供に際し、労働契約を変更することは過重な負担に該当するか)、③障害者が障害の開示を望まない場合、事業主は常に合理的配慮義務を免責されるかといった諸課題はなお残されている。本稿ではこうした諸課題について検討したうえで、今後の立法政策において必要とされる視点を示すことを目的とする。

2017年8月号(No.685) 特集●障害者雇用の変化と法政策・職場の課題

2017年7月25日 掲載