日本社会における仕事の価値の長期的な推移

要約

田靡 裕祐(立教大学助教)

本稿では日本社会における働き手にとっての仕事の価値に注目し、縦断的調査および直近の横断的調査のデータを併用しながら、人々が就労になにを求めているのか/求めてきたのかについて定量的に論じた。仕事の価値の最も基底的なトレンドは、「仲間」との楽しさや「専門」性の発揮といったような、仕事そのものに内在する内的価値への志向の高まりであった。しかしそのようなトレンドは2000年代に入ると抑制され、生活維持のための要件である「安定」のような、外的価値への志向が高まった。かつての「専門」への志向の高まりは、壮年層や高齢層での選択割合が上昇したことで生じた。他方で「安定」への志向の高まりは、若年層における選択割合が1990年代を境に上昇に転じたことで生じた。また、人々にとっての仕事の価値は多様であり、少なくとも1970年代以降、仕事の価値の多様性は一貫して保たれてきた。仕事の価値に対する評価の多様性は、働き手の属性によって、部分的にではあるが説明できる。「専門」は、特に企業社会の中核を占める働き手にとって重要な価値であるが、非正規雇用のような周縁的な働き手にとっては、さほど重要ではない。また「安定」は、働き盛りの年齢層や、大企業の正社員といった働き手によって特に重要視される傾向がある。

2017年7月号(No.684) 特集●モチベーション研究の到達点

2017年6月26日 掲載