ビジネスをとりまく環境変動と労働法

要約

本庄 淳志(静岡大学人文社会科学部准教授)

本稿では、ビジネスをとりまく変動のうち、景気循環的な要因と構造的な要因による場合とに着目し、労働法上の諸問題を概観する。ビジネス変動というマクロな動きのなかでも、法的レベルでは、個々の当事者の権利義務というミクロな問題を切り離すことはできない。他方で、労働市場政策、あるいは個々の契約に対する規律という次元でも、望ましい方向に誘導するインセンティブを設けるという視点のもとでは、隣接諸領域の状況もふまえた鳥瞰的な議論が不可欠となる。ビジネスをとりまく環境変動に対して、日本では、大企業のいわゆる正社員を典型として、雇用の維持を重視する反面で、企業組織内部における人事の大幅なフレキシビリティを認め、同時に、非典型雇用については、外部労働市場を通じた調整を図ることで対応してきた。しかし、将来の不確実性が高まるなか、個々人の選択や職業キャリアを重視する立場に照らせば、権利濫用等の柔軟な判断枠組みのもとでも、個人の事情へいっそう配慮すること、さらには、再交渉を促すようインセンティブを設けることが好ましい。雇用を含む役務提供契約における「同意」の再評価である。その際、企業が労働力を調達する手法は雇用に限らず、インディペンデント・コントラクター等の拡大も現実味を帯びるなかで、狭義の労働法的な視点からのみ規制を展望することは適切でなく、自営的な就労も含む、広義のワークルールのあり方を広く検討すべき時期にきている。

2017年6月号(No.683) 特集●マクロ的な視点から読み解く労働問題

2017年5月25日 掲載