雇用の長期的な趨勢─歴史的な観点から

要約

中林 真幸(東京大学社会科学研究所教授)

1920年代以降から1960年代にかけて、地方から都市、農業部門から非農業部門への移動をともないつつ、男子非農林業部門の雇用は急速に拡大した。同時に、製造業から製造業への移動、商業から商業への移動をはじめとして、非農林業部門内部における類似産業、類似職種間の移動も活発であり、分厚い中途採用市場は1920年代に始まる高成長において、労働者が産業特殊的な技能を形成する経路として、また、景気後退時における雇用調整の手段として、重要な役割を果たした。労働市場のこうした構造を反映して、1971年の雇用調整調査は、雇用調整の最大の手段が中途採用抑制にあったことを示している。また、常雇労働者の市場が柔軟であったことから、臨時労働者の解雇や雇用延長停止によるショックの緩衝は、雇用調整の主たる手段ではなかった。その後、1970〜1990年代に、現在において支配的な新卒一斉採用が普及した結果として、2000〜2010年代においては、中途採用の抑制はもはや雇用調整の主たる手段とはなりえず、雇用調整の支配的な手段は一貫して残業規制となっている。

2017年6月号(No.683) 特集●マクロ的な視点から読み解く労働問題

2017年5月25日 掲載