景気変動と労働市場

要約

宮本 弘曉(元東京大学公共政策大学院特任准教授)

本稿は景気変動上の労働市場の動きについて事実を整理すると共に、景気変動と労働市場の関係を分析する研究のサーベイを行う。経済では産出量や雇用量に短期的な変動があり、それらは密接に関連している。景気循環上、労働市場がどのように変動するかを知ることは学術的にも政策的にも重要である。本稿ではまず、データから経済変数の循環的性質を分析する手法を紹介し、雇用量や賃金といった労働市場変数が日本において景気循環上どのように変動しているかを概観する。次に、マクロ経済学で景気変動を分析するリアル・ビジネスサイクルモデルと労働市場のマクロ分析を行う際の標準的な理論であるサーチ・マッチングモデルを紹介し、それぞれのモデルが観察される労働市場の循環的特性をどの程度、説明できるのかを検証する。標準的なリアル・ビジネスサイクルモデルは主要なマクロ経済変数の変動を定性的かつ定量的に再現することができる一方で、失業が説明できなかったり、実質賃金の循環変動を捉えることができないなど、労働市場の変動を捉えられないという問題がある。本稿ではこれらの問題点を整理すると共に、その解決法を提示している既存研究を紹介する。また、サーチ・マッチングモデルは実際の景気循環上の労働市場の動きを定性的には説明できるものの、定量的には説明できないことがよく知られている。本稿ではサーチ・マッチングモデルの循環的特性をめぐる一連の研究を紹介する。また、最近ではリアル・ビジネスサイクルモデルとサーチ・マッチングモデルを融合することで、より精緻に景気変動と労働市場の関係を分析する研究も行われているが、本論文ではこれらの研究も紹介する。

2017年6月号(No.683) 特集●マクロ的な視点から読み解く労働問題

2017年5月25日 掲載