論文要旨 働く人の公平感を高める要因の分析

高村 静(東京大学大学院学際情報学府博士課程)

様々な属性・背景をもつ人や正社員以外の雇用形態で働く人が増加し、職場の労働条件の個別化が進む中、働く人の公平感をどのように確保するのかは困難な課題である。本論では、構成員の組織の決定に対する満足や受容、さらに組織へのコミットメントやモチベーションなど長期的な効果にも影響を及ぼすとされる公平感の知覚に着目し、どのような要因が働く人の公平感を高めるのかを分析した。

『「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査』(内閣府、2010年)の個票(注)を許可を得て使用し、公平感(「職場で誰もが公平に扱われている」)について二次分析を行ったところ、次のような結果が得られた。まず、外的報酬(時間当たり賃金等)だけでなく、内的報酬(能力開発機会等)の分配でも正社員との格差が指摘される非正規社員の公平感の平均値は正社員のそれより低かった。特に男性ではその差は1%水準で有意であった。しかし男性グループにおいても属性に加えて「自分の能力・専門性がいかせる」「職業能力やキャリアを高める機会や支援がある」などの雇用管理に関するダミー変数を投入すると、非正規社員であることの公平感への有意なマイナスの影響は見られなくなった。また時間当たり賃金の公平感への明確な影響は見られなかった。雇用形態そのものよりも、職場での幅広い機会や支援の有無が公平感に影響している可能性が示された。

(注:二次分析にあたり、内閣府男女共同参画局から『「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査』の集計用のデータの提供を受けた。)

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第4分科会(働き方、職場管理)

2015年1月26日 掲載