論文要旨 母親の就業が子どもの健康を損なうのか
─二人親世帯と母子世帯の比較

馬 欣欣(京都大学大学院薬学研究科特定講師)

本研究では、母親の就業状況がどの程度子どもの健康状態および不登校行動に影響を与えるのか、また世帯類型別によってその影響が異なるのかについて、分析を行った。具体的には、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2011年11月に実施した第1回『子育て世帯全国調査』の個票データを活用し、子どもが健康になる確率、および子どもが不登校になる確率に関する構造型プロビット分析モデルを用い、内生性の問題を考慮した分析を実施した。主な結論は以下の通りである。二人親世帯、母子世帯のいずれにおいても、(1)非就業者のグループに比べ、就業者のグループで、子どもが健康になる確率が高く、また子どもが不登校になる可能性は低い。(2)非就業者のグループに比べ、正規雇用者のグループで子どもの健康状態が良い傾向にある一方で、母が非正規雇用者のグループで子どもの健康状態が悪い傾向にある。(3)非就業者の場合に比べ、正規雇用者の場合、子供は不登校になる確率は低い。ただし、母子世帯で、母が非就業者のグループに比べ、母が非正規雇用者の場合、子供は不登校になる確率は低い。(4)母親の就業状況を含む他の条件が一定であれば、子どもが不健康になる確率、および不登校になる確率は、母子世帯が二人親世帯に比べて相対的に高い。母子世帯で母親の就業状況以外の要因も、子どもの健康状態に影響を与えることがうかがえる。これらの分析結果により、今後、女性の継続就業の促進政策(とくに正規雇用者としての仕事と家事・育児の両立を促進する政策)を実施すべきであることが示唆された。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第4分科会(働き方、職場管理)

2015年1月26日 掲載