論文要旨 生命保険業界における余剰人員はどこへ行ったか

小山 浩一(法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程)

生保業界は、1996年4月保険業法改正以降の規制緩和、市場環境変化による契約構造の変化などが複合的に進展してきた。この間、複数の国内保険会社の破綻、外資系会社の参入、合併等が進み、そこで働く内勤職員の雇用は大きく変化した。生保内勤職員の雇用変化は、配置構成に表れる。すなわち、本社勤務者の増大、営業店勤務者の減少である。営業店勤務者減少要因は、営業職員チャネルの規模縮小にある。このため、同チャネルで営業管理系職務に従事する内勤職員が継続的に減少を続けている。

営業職員チャネルにおける営業管理系職務は、広範囲にわたる業務をこなすゼネラリストタイプのスキルを要求される。他方、代理店や金融機関チャネルの営業系従事者は、営業としての専門性を要求される。今後、営業職員チャネルにおける営業管理系職務従事者の円滑な労働移動が必要となる。

本稿の結論は、当該職務従事者へのキャリア教育「自分の専門性が何かを特定し認識すること」と「外部ネットワーク参加による専門性の向上と社外人脈形成」が必要であること、生保会社の人事面では、後発的に余剰人員を発生させる要因となる営業職員チャネルへの新卒採用者の配置抑制が必要であること、以上である。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第3分科会(労働市場と労働法制)

2014年1月24日 掲載