特集趣旨「初学者に語る労働問題」

2010年4月号(No.597)

本特集は、「初学者」を対象にして、現下の日本社会の労働問題の重要な論点を平易に解説することを目的としている。しかし、本特集が想定する初学者とは、労働問題全般に対して素人というわけではなく、特定の専門分野に熟達している玄人である。

そういう人を対象に、労働問題の特定の論点あるいはテクニカルタームを理解してもらうには、時代を遡りながら、現実の問題の変容の機微を学術的に見出してゆくこと、あるいは理論がどのように現実の問題解決に活かされているかを、jargonbuzz-wordを排しながら解説することが必要であろう。加えて全体としては、論点の網羅性が要求される。したがって本特集は、マクロ経済環境と労働問題、労働政策、制度的環境(法、規制、監督)、内部労働市場、労使関係の5つの分野から、現下の労働問題として重要と思われる論点を19取り上げ、学術的知見を基盤にしつつ実務的に解説をした。またうち5つはインタビュー記録も取り入れ、よりビビッドに問題の本質を浮き上がらせている。本特集の読者は、問題として認識する現象は同じくするものの、専門が異なればそのアプローチや解釈の仕方に大きな違いがあることに驚かれるかもしれない。

労働問題研究は、時代の要請と学術基盤の間を架橋していく過程に存在する。時代の要請が先行し学術基盤の熟成を待つ問題もあるし、逆に学術が先んじていて、それが現実の労働問題の解決に資することもある。いずれにしても重要なことは、時代の要請と学術の間のダイナミックな相互作用を促すように、細分化された専門を架橋してゆく知的営みであろう。特定の専門に熟達しつつも異なる分野では初学者であるかもしれない読者に、専門を超えた議論を進めてもらい、労働問題の解決への新たな糸口を見出してもらうこと。これが本特集の企図である。

印刷用 (PDF:100KB)

2010年3月25日 掲載

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