資料シリーズ No.198
高齢者の多様な活躍に関する取組
―地方自治体等の事例―

平成30年3月30日

概要

研究の目的

高齢者の活躍を支援する地方自治体等の取組の好事例を収集し、政策の立案への反映等を通じて、地域レベルでの生涯現役社会の実現に資するものとする。これに加え、「60代の雇用・生活調査」の二次分析を行い、今後の就労支援策の対象となりうる60代の働いていない高齢者について、生計上の問題がない層とそうではない層で比較を行い、その実像を明らかにする。

研究の方法

ヒアリング調査(8自治体等)

主な事実発見

  1. 高齢化の進展に伴い、年金、医療、介護等の社会的コストが増大する。経済成長を通じた税、保険料収入の増大、医療、介護制度の改善、効率化、少子化の解消等様々な対応策が考えられるが、高齢者の就労は、社会の支え手の増加を通じて経済成長に寄与するとともに、健康寿命の延伸を通じて、医療、介護に要する費用の削減が期待でき、高齢者の地域における活躍を支援することは意義深いこと。
  2. 団塊の世代が大半を占める60代後半層の男性(平成26年時点)のうち、就労していない高齢者(今後働く可能性のある高齢者)について、その理由を生計上問題のない層とそうではない層とで比較すると、前者は仕事をしたいと思わなかった(ので就労しなかった)とする者の割合が79.1%で、後者の43.5%に比して大きいこと。

    また、前者の生計上の問題はない層で、仕事をしたくない第一の理由とするほどに趣味や社会貢献活動に専念したり、自身の健康上の問題があるわけではなく、生きがい等就労支援の対象者となる可能性がある者は40名で同世代(677名)の約6%であること。(したいと思ったのに仕事に就けなかった層は緊要度が高く、別の視点からの対策が必要)

    図表1 就労しなかった60代後半の高齢者(男性)の仕事をしていない理由

    図表1画像

  3. 各自治体の特徴ある取組

    厚生労働省の生涯現役地域連携促進事業に参加している8自治体等についてヒアリングを実施し、特徴のある取組を収集した。

    ①コーディネーターの活躍

    地域の団体や企業と密接な関わりを持ち、地域のニーズ(資源)と高齢者のニーズを結びつける「コーディネーター」が活躍し、高齢者の就労を推進している事例。

    ②農業分野の取組

    農業分野については、体力を必要としたり拘束時間が長いなど様々な障壁が存在するが、業務の切り分けや農作物の選択によって就労が進んでいる事例。

    図表2  コーディネーターの活躍と農業への参加

    図表2画像

    ③高齢者ならではの強み

    高齢者を体力等生産力の低下した存在として捉えるのではなく、高齢者ならではの強みがあることについて、企業の理解、高齢者の自覚を促し、就労につなげている事例。

    図表3  企業のニーズと高齢者ならではの強み

    図表3画像

  4. 生涯現役地域連携促進事業の展開に当たってのポイント

    ヒアリング事例から、地域における高齢者の活躍を支援するために、生涯現役地域連携促進事業(以下「連携事業」)を実施する上でのポイントを整理した。

    図表4  高齢者活躍へ向けた取組のポイント

    図表4画像

政策的インプリケーション

地方自治体の高齢者の活躍支援の取組については、連携事業を通じ、今後相当数の自治体に拡大していくことが政府の方針とされているところであり、先行する成功事例から自治体への周知、啓発に当たってのポイントがより明確になることが期待できる。

政策への貢献

連携事業を展開する厚生労働省職業安定局雇用開発部高齢者雇用対策課の協力を得てとりまとめたものであり、事業の普及拡大に際し、参考資料として本研究成果を活用できると考える。

本文

本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「人口・雇用構造の変化等に対応した労働・雇用政策のあり方に関する研究」
サブテーマ「生涯現役社会の実現に関する研究」

研究期間

平成29年度

研究担当者

中山 明広
労働政策研究・研修機構 統括研究員
園田 薫
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー
山岸 諒己
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー

関連の研究成果

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