資料シリーズ No.119
雇用保険業務統計分析

平成25年5月10日

概要

研究の目的

雇用保険の業務統計の動きを中長期的にみる。併せて、積立金の果たす役割を整理する。

研究の方法

まず、雇用保険事業年報等に掲載されている業務統計を、雇用、賃金の労働統計等とともに分析した。保険料収入、被保険者数、基本手当や雇用継続給付等の各種給付の受給者数や支給額などについて、現行制度発足の1975年度以降の動きを中長期的にみる。次いで、収支差と積立金の動きをみた上で、積立金の果たす役割の整理を試みた。給付のうち基本手当は、雇用失業情勢の影響で、年によっては倍近く変動する。そのため、単年度の収支が均衡することが稀である。積立金は、経済変動等によって発生する収支差を長期的に均す役割を果たす。また、ソルベンシー・マージン比率の考え方を雇用保険の積立金に当てはめたとして、どのような計算が考えられるか、考察も行った。さらに、リスク管理の手法の一つであるモンテカルロ・シミュレーションを雇用保険で行うとしたらどのようなものが考えられるか、可能性を探る一環として、試算を試みた。

主な事実発見

特徴的と思われる中長期的変化から何点か選び紹介する。

図表1 被保険者数の増加 2000年代半ばから一般被保険者数が増加

図1画像

図表2 女性の年齢別就業パターンの変化も一因

20~24歳である年度が1991度のコーホート(△の線)と1996年度のコーホート(×の線)は、25~34歳で被保険者であるかどうかの状況が異なる。

図2画像

図表3 特定受給資格に該当しない初回受給者の減少(2001年度以降)

図3(男)画像

図3(女)画像

注 特定受給資格者:倒産・解雇等による離職者(再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者)

特定理由:有期労働契約が更新されなかったこと等による離職者(2008年度までは特定以外に含まれる)

特定以外受給資格者:上記のいずれにも該当しない者(定年退職者や自己の意思で離職した者)

図表4 年によって倍近く変動する基本手当支給額

図4画像

図表5 収支差と積立金の推移

図5画像

そのほか、就職促進給付、育児休業給付、高年齢雇用継続給付などの動きもみた。

積立金の役割

雇用保険は失業を対象とすることから、経済変動に伴い、基本手当の支給額が大きく変動し、単年度収支に赤字と黒字が生じるのは避けられない(図表5、赤字部分に斜線)。黒字を累積して得る積立金は、雇用失業情勢が悪化して赤字となった際に、安定した給付を維持するための財源である。赤字が続く期間の長さや赤字の大きさを前もって知ることは難しく、各時点での積立金の適当な水準を求めることは難しい。

リスク管理の手法の一つにモンテカルロ・シミュレーションがある。これを雇用保険で行うとしたら、どのようなものが考えられるか、試算してみた。モンテカルロ・シミュレーションは、前提の一部を変えつつシミュレーションを繰り返すことで、起こり得る結果を検証する手法である。料率と離職率について計11ケースを設定の上、離職票提出率などを実績に基づく分布に沿って無作為に変えつつ向こう数十年にわたって行うシミュレーションを、各ケース1,000回ずつ試みた。

例えば、離職率が実績に基づく時系列モデルによって動くとし(月1.4%程度を中心に振動、収れん)、料率が現行(二事業分を除く1,000分の10)のまま、というケースでは、2030年度時点で多くの場合、積立金が枯渇する。料率についていわゆる弾力条項が効き、積立金が年間の失業等給付の2倍以下になれば料率は1,000分の14になるとするケースでは、2035年度まで積立金が枯渇することはない(わずかではあるが2016年度頃から料率が1,000分の14になる場合がみられる)。

また、民間保険で計算される比率に、ソルベンシー・マージン比率がある。これは1年間における‘支払い余力’を示す比率であるが、これを雇用保険の積立金で計算するとした場合の考え方の整理を試みた。

政策への貢献

雇用保険制度の企画、運用の基礎資料として活用が期待される。また、経済情勢把握のために、雇用保険の業務統計を経済指標の一つとして活用する際の参考になるものと思われる。

本文

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研究の区分

課題研究「雇用保険財政収支の中長期的推計、適正な積立金水準についての考察」

研究期間

平成24年度

執筆担当者

石原 典明
労働政策研究・研修機構 調査・解析部情報統計担当部長
早見 均
慶應義塾大学商学部教授

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入手方法等

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研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

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