資料シリーズ No.115
中小企業における若年者雇用支援施策の利用状況
(採用担当者ヒアリング調査報告)

平成25年3月29日

概要

研究の目的

若年者の雇用環境は依然厳しい。一方で、不況期でも若年人材不足に悩む中小企業も多い。両者のマッチングを促すため様々な若年者雇用支援施策・制度が運用されている。本研究では、今後これらの施策・制度を効率的・効果的に運用していくために、主に中小企業による現行施策・制度の活用状況およびその影響・効果を把握するための調査を実施した。本資料シリーズはそのうち、採用担当者に対する調査の結果をとりまとめたものである(若年社員に対する調査結果は別途報告する)。

研究の方法

以下の対象者にヒアリング調査を実施した

  1. 若年者雇用支援施策を活用して若年者を採用した(中小)企業の採用担当者 25社
  2. 上記の企業に制度を利用して就職した若年者 21名
実施時期

平成24年6月~9月

主要な質問項目
  1. 採用担当者

    若年正社員の採用・育成方針。調査対象社員について、募集計画、採用、育成、現在までの経緯と今後の予定。活用した若年者雇用支援制度の利用目的、経緯、得られた効果、意見。

  2. 若年社員

    最終学歴在学中の就職活動から現在までのキャリア。就職(転職)活動、若年者雇用支援制度活用状況。前職・現職の労働条件・職務・裁量範囲・職務遂行に要する能力・就業意識。

主な事実発見

1) 利用状況と利用目的

調査対象企業25社が、特定の若年者を採用した際の利用施策・制度を図表1へ、利用目的を図表2にまとめた。助成金制度や就職面接会は経済的メリットと若年者からの応募を増やすことが多く挙げられた。ジョブサポーターによる個別支援や3年以内既卒者トライアル雇用奨励金など、緊急雇用対策の一環として設立された新しい施策・制度は、ハローワーク職員や社会保険労務士に勧められたという回答が多い。

図表1 回答企業のプロフィールと利用した施策・制度

図表1画像

※1 但し書きがない限り、「正社員数」には「役員」が含まれている。

※2 制度の利用を申請したが助成金は受給していない。

※3 制度の利用を申請したが助成金は受給していない。

※4 3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金を利用して採用。

図表1拡大表示

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図表2 制度を利用した目的(複数回答)

図表2画像

図表2拡大表示

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2) 施策・制度を利用して採用した若年社員の特徴
  • 就職面接会

    全員がジョブサポーターに勧められて参加している。

  • 試行雇用奨励金

    正社員経験がある30代が中心。業種・職種を限定しないスキルや社会経験が評価される。

  • 3年以内既卒者トライアル雇用奨励金・ジョブサポーターによる個別支援

    ともに20代前半の正社員経験がない人々が中心。前者は卒業後1年未満の既卒者、後者は新卒者が多い。

3) 施策・制度の影響・効果
  • 就職面接会

    応募を増やす手段としてだけでなく、企業側から若年者へアピールする機会としても活用されている。準備等に要する時間・労力とメリットとのバランスから有益か否かが判断される。業種等を限定した面接会が特に好評を得ていた。

  • ジョブサポーターによる個別支援

    ジョブサポーターの助言により求人企業が募集対象者の範囲を広げる、不採用者に再挑戦の機会を提供する等の事例が得られた。求人企業からは、自社の人材要件に合致した人材を選別した上で紹介されるため効率的に採用活動ができる点が好評である。

  • 試行雇用奨励金および3年以内既卒者トライアル雇用奨励金

    両制度とも、 (1) 利用しない場合と比べて募集対象者の範囲が拡大する、 (2) 採用選考時に応募者の成長可能性を評価する度合いが大きくなる効果が見られた。試行雇用奨励金は、有経験者から「当該業界・職種は未経験だが社会人としては成熟している人」へ募集対象者の範囲が拡大する。3年以内既卒者トライアル雇用奨励金は、有経験者から未経験の若者(新卒者含む)へ募集対象者の範囲が拡大した事例や、新卒者のみを募集していた企業が既卒者も募集対象者に含めるようになった事例が見られた。

政策的インプリケーション

  • 就職面接会

    求人企業による活用を促進するには、準備等にかかる実務上の支援と、業種等のカテゴリを限定した面接会の強化が効果的だが、開催地域の人口規模、産業分布や開催時期等に考慮する必要がある。

  • ジョブサポーターによる個別支援

    当制度に対する高い評価は、求人企業のジョブサポーター個人に対する信頼に支えられている。今後、個人に対する信頼を組織に対する信頼へと転換していくためには、担当者交代時の引き継ぎや新任ジョブサポーターの育成を強化することが有効だろう。

  • 試行雇用奨励金および3年以内既卒者トライアル雇用奨励金

    両制度は上述のような効果を上げる一方、制度がなくても若年者を募集・採用したと思われる企業も利用している。全ての求人企業へ公平に情報提供を行うからには、制度による支援の必要がない企業が制度を利用する事例が一定数現れることは不可避である。ある程度の「無駄」の発生を前提に、できるだけ「無駄」が小さくなるような制度設計のためには、若年者の雇用機会の拡大につながる形で制度を活用した企業がどのような傾向をもつのかを調べる必要がある。

政策への貢献

労働政策の効果的、効率的な推進に活用できる。

  1. 職業安定業務において対企業サービスを充実させるための資料を提供する
  2. 若年者に対する雇用支援政策の活用実態および効果を明らかにすることで、より効率的な制度運用のための情報を提供する

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「経済・社会の変化に応じた職業能力開発システムのあり方についての調査研究」

サブテーマ「若年者の職業への円滑な移行に関する調査研究」

研究期間

平成24年度

執筆担当者

岩脇 千裕
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

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