資料シリーズ No.106
東日本大震災の雇用対策を考えるための事例研究
―雲仙普賢岳噴火、阪神・淡路大震災、
中越地震、能登半島地震、中越沖地震―

平成24年 3月30日

概要

研究の目的と方法

本調査の目的は、東日本大震災における雇用面での対応策を検討する上で参考となる資料を提供することにある。そこで、雲仙普賢岳噴火、阪神・淡路大震災、中越地震、能登半島地震それに中越沖地震といった過去の大災害を事例として取り上げ、聞き取り調査や文献調査を実施した。

主な事実発見

雲仙普賢岳噴火に関する調査からは、この災害の直後にわが国で最初の復興基金が創設されたことや、その目的が、行政では行えないきめ細かな対策を迅速、弾力的に実施することにあることなどが指摘された。ただし、復興基金の事業総額に占める雇用関連支出の割合は図表1に示されるようにわずかであるが、これは農業・農村に大きな被害が出たことに関連していると考えられる。なお、雇用関連支出の内訳についても検討され、被災求職者雇用開発助成金支給事業や中小企業労働福祉施設等改善資金利子補給事業などに支出されていることが示された。

阪神・淡路大震災に関する調査では、阪神淡路大震災時に実施された主たる雇用政策が図表2のように整理されると共に、いくつかの政策についてなされている先行研究での評価が紹介された。また、国や県の関係機関に対して聞き取り調査を実施することにより、雇用調整助成金や職業訓練などの政策や、復興基金を活用して実施された被災地しごと開発事業やコミュニティ・ビジネス離陸応援事業などの有効性が議論された。

中越地震、能登半島地震それに中越沖地震に関する調査では、以下のような指摘がなされた。雇用創出・就業支援施策には(1)被災前の雇用の維持、解雇による失業者の発生の防止、(2)失業者への対応、就業支援、(3)新たな雇用創出の3つの柱があり、国は、労働相談窓口の設置、主要企業への雇用維持の依頼、雇用調整助成金の要件緩和などを行っている。また、県は復興ビジョン、復興計画を作成し、生活支援の1つとして直接的な雇用創出施策(被災企業の雇用維持支援、離職者支援など)と、間接的な雇用創出・就労支援(農林水産業、漆器、酒造業などの重点支援)を行っている。このほか、基金を活用した雇用創出・就労支援が弾力的に実施されており、復興支援員と呼ばれるコミュニティ支援が行われている(以上、図表3参照)。復旧・復興計画の中で一時的な雇用対策としてのメニューだけではなく、中長期的な雇用創出・人材育成につながるメニューづくりが重要である。

政策的含意

紙幅の制約があるために、得られた政策的含意を具体的に記すことは避けるが、大災害時の雇用政策として有効な政策を指摘すると共に、各種雇用政策をより望ましいものとするためにはどのような工夫が必要となるのかなどを指摘した。

政策への貢献

本調査では、過去の災害時に実施されたさまざまな政策のうち、特に雇用面での対応策に焦点を当てて調査・研究を実施することにより、東日本大震災における雇用政策としていかなる手段が利用可能であるのかや、各手段を利用する際の留意点などを明らかにした。

なお、過去の災害やそれへの対応策を議論した先行調査・研究は数多く存在するが、雇用面での政策を主たる対象として扱ったものは少なかったといえる。

図表1 復興基金の分野別支出比率

図表1画像

図表2 阪神・淡路大震災時に実施された主たる雇用政策

※図表をクリックすると拡大表示します。(拡大しない場合はもう一度クリックしてください。)

図表2画像

図表3 中越地震、能登半島地震、中越沖地震における雇用創出・就業支援の概要(まとめ)

図表3画像

本文

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研究期間

平成23年度

執筆担当者

大谷 剛
労働政策研究・研修機構労働経済分析部門 副主任研究員
中村良二
労働政策研究・研修機構就業環境・ワークライフバランス部門 主任研究員
渡邊博顕
労働政策研究・研修機構労働経済分析部門 副統括研究員

入手方法等

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