資料シリーズ No.103
諸外国における職務評価を通じた均等賃金促進の取り組みに関する調査

平成24年 3月30日

概要

研究の目的と方法

厚生労働省の要請により、諸外国(イギリス、スウェーデン、カナダ)において、均等賃金の促進を目的として導入・実施されている職務分析・職務評価手法の制度枠組みを把握することを目的に、調査を実施した。

主な事実発見

  • 各国で推奨される職務評価モデルにおける基本的な評価項目は類似しており、 (1) 知識・技能、 (2) 努力(身体的・精神的負荷)、 (3) 責任、 (4) 労働環境(労働条件)が軸となっている。実際の評価の実施に際しては、業種・職種の特性により項目の追加やウェイト付けなどがなされるが、こうした調整においても、結果として男女間の特性の違いに基づく差別につながらないよう配慮が求められる。

図表 職務評価に用いられる評価項目例と主な手順の例

図表 職務評価に用いられる評価項目例と主な手順の例/資料シリーズNo.103

政策的含意

  • 各国で実施されている職務評価は、いずれも男女間の均等処遇の実現を目的とするもので、フルタイム労働者とパートタイム労働者の間の賃金格差解消は直接的な目的ではない。背景には、対象国に共通の傾向として、格差の問題がパートタイム労働者と一般労働者という対比ではなく、男女間、ネイティブと移民間、健常者と障害者等の間のものとして認識され、そこに生じる格差・差別の是正に主眼が置かれていることがある。また職務評価は、それに従事する個々の従業員の能力や就業形態等にかかわらず、職務自体の内容(困難さなど)を対象とするものとして実施されていることに留意する必要がある。
  • 職務評価の実施に際しては、労働組合や従業員など労働側の参加が重視されている。カナダでは、排他的交渉権を有する労働組合と使用者との交渉が基盤となり、団体交渉単位として認定された範囲で男女の比較をすることが基本となる。またスウェーデンでは、職務評価の作業チームを労使で構成することが推奨され、同様にイギリスでも、労組等の参加が奨励されている。

政策への貢献

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)附帯決議においては、「短時間労働者と通常の労働者との均等・均衡待遇の確保を更に進めるため、参考となる先進的な雇用管理事例のほか、職務分析の手法や比較を行うための指標(モノサシ)について内外の情報を収集するとともに、事業主に対し、それらを提供することにより、その取組を支援すること。」とされている。わが国では、職務分析・職務評価は一般的に普及していないことから、諸外国の制度等に関する情報収集を通じて、こうした議論に資することを期待したい。

本文

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研究期間

平成23年度

執筆担当者

天瀬光二
労働政策研究・研修機構 国際研究部次長,主任調査員
福島淑彦
早稲田大学政治経済学術院 教授
山崎 憲
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
樋口英夫
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐

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