資料シリーズ No.69
職業相談の改善を目的とした地方研修プログラム・教材の開発と効果

平成22年4月15日

概要

研究の目的と方法

  • 現下の厳しい労働市場、さらには将来の労働力人口減少下において、公共職業安定所が需給調整機能を一層発揮していくことが求められている。
  • 公共職業安定所の需給調整機能の強化のためには、職員の専門性の向上が不可欠であり、職員の専門性は、研修で磨かれ、具体的な職業相談において発揮され、さらに向上していく。公共職業安定所の職員に対する研修は、当機構が実施する中央研修と都道府県労働局が実施する地方研修があるが、地方研修においては、職業相談業務に直結した取り組みやすく実践的な研修プログラム及び研修教材が求められている。
  • そこで本研究は、職員を対象とした対応に困難を感じる職業相談場面に関するアンケート調査の結果(ディスカッションペーパー09-01『職業相談における対応困難場面の分析』)をもとに、 (1)職員が求職者に質問しても答えてくれない場面、 (2)求職者が職員に多数の求人への紹介を希望する場面の2種類の困難場面を取り上げ、当該場面へのやりとり上の工夫である職業相談技法を学習する研修プログラムである『やりとり検討プログラム』、DVD教材『よりよい職業相談を行うために−困難場面への対応』(PDF:23KB)及び『研修実施マニュアル』等の開発を行った。本資料シリーズは、その開発の経緯と効果を取りまとめたものである。 
  • やりとり検討プログラムの効果測定を目的として、弊機構の研究員が地方労働局で同プログラムを実施した後、研修生を対象としてアンケート調査を実施した。研修の開発過程の段階から、効果測定をしており、また職員が自主的にやりとり検討プログラムを実施し、アンケート調査を行っているものまで含めると、8労働局11ハローワークの388人の研修生からアンケートの回答を得ることができた。

主な事実発見

やりとり検討プログラムの内容ならびにDVD教材が確定した、2009年9月以降に実施された6労働局118人の研修生から収集されたアンケート調査の結果から、 (1) グループワークが機能していること、また研修生は研修を体験することにより、 (2) 困難場面の対処方法をイメージできるようになること(図表1参照)、 (3) 職員同士の話し合いや、組織でのノウハウの蓄積の効果をより強く認めるようになること(図表2参照)、などが明らかにされた。

政策的含意

  • キャリアガイダンス部門では、2003年より、研究成果を研修に反映させ、研修内容の充実を図るとともに、研修の場を通じて問題意識を吸い上げ研究に活かすという、研究→研修→実践のサイクルによるアクションリサーチ(労働政策研究報告書No.107 『職業相談におけるアクションリサーチ』参照)を実施してきた。やりとり検討プログラムの研究開発は、このアクションリサーチを地方研修にまで発展させたものである。
  • やりとり検討プログラムの効果測定から、職員一人ひとりが特に意識せずにやってきた困難場面の対処方法をグループで話し合うことにより、全員で分かち合えることが検証された。やりとり検討プログラムの普及により、こういった取り組みがハローワーク組織でのノウハウの蓄積につながることが期待される。

政策への貢献

ハローワークの機能強化を図るための研修効果を具体的に理解することが可能となった。研修での活用が期待される。

図表1 多数求人の紹介希望への対処がイメージできる

図1 多数求人の紹介希望への対処がイメージできる/資料シリーズ No.69


図表2 職員同士の話し合いの効果

図2 職員同士の話し合いの効果/資料シリーズ No.69

本文

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執筆担当者

西村公子
労働政策研究・研修機構 研究員
榧野 潤
労働政策研究・研修機構 研究員

研究期間

平成21年度

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
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