労働政策レポート No.8
派遣労働者の働き方とキャリアに関する調査
──派遣労働者16人の代表事例から──

平成 22年 6月21日

概要

研究の目的と方法

派遣労働者の属性等については、これまでもアンケート調査などによる総括的な把握がなされてきた。しかし、個々の派遣労働者がどういった経緯、経路、理由で派遣労働者となり、派遣労働者としてどの程度の満足、あるいは不満を抱き、今後自らのキャリアパスをどのようにしたいと考えているのか等についての詳細なヒアリング事例調査は少なかった。そこで、現在、派遣労働者として働いている人に対して、学校卒業後から派遣労働者になるまでの経緯や理由、派遣労働に従事することの満足度、今後のキャリアパスに対する認識などについて、ヒアリング調査を実施した。

主な事実発見

  1. 派遣労働者のなかには、初職が正社員で派遣社員になる者(例えば、結婚退職でやめた女性)だけでなく、就職氷河期や不況の長期化によって、正社員になれずに派遣労働をやむなく選んだ者が少なくない。就職氷河期で学校卒業後に即派遣になった人のなかには、派遣労働を通じて実務経験を積み、正社員になりたいと考えている者が目立つ。
  2. 正社員になれずやむなく派遣をしている者のなかには、不況の長期化により、正社員の転職がうまくいかず、派遣をそのまま続けている者も多い。とくに一人暮らし(未婚)では、生活を維持するために、早く働かなければならず、求職活動ができない現状もある。また、派遣を続けると、派遣契約期間中の求職活動は就業時間以外ではやりづらいことや、企業の募集要件(例えば、学歴、経験者募集等)によって、応募前に求職活動を諦める者もいる。
  3. 2008年9月のリーマンショック以降、派遣会社の仕事の紹介件数が減っていることを経験した派遣労働者が目立つ。派遣会社から希望の仕事が紹介されないため、派遣の仕事を探している者のなかには、ネット等の仕事検索サイトから入り、仕事を選んだうえで、派遣登録するケースも多い。これにより、派遣元との結びつきが希薄になっている。
  4. 派遣労働者のほとんどが、派遣という働き方について、派遣先からいつ切られるか、派遣元から仕事の紹介がなくなるのではないか、などの雇用不安を抱いている。派遣労働者は、景気低迷が続けば、派遣会社の仕事の紹介が減ると考えている者が多く、年齢上限から雇用不安を感じる傾向もある。雇用不安を払拭するため、彼・彼女らのなかには、正社員になりたいという希望を持つ者が多い。雇用不安から正社員になりたいという者と、このまま派遣社員を続けたいと考える者に二分化している。

政策的含意・提言

派遣労働者のなかには、正社員になれずやむなく派遣を続けている者が少なからずおり、とくに一人暮らしの未婚者などは生活を維持し続けるため、求職活動を続けていないことがわかった。派遣労働をしている期間も長期化していることから、派遣労働者に対する正社員などへの転換の促進支援などが必要である。

図表 派遣社員の将来のイメージのポイント

図表 派遣社員の将来のイメージのポイント/労働政策レポート No.8

本文

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執筆者

奥田 栄二
独立行政法人 労働政策研究・研修機構調査員

研究期間

平成21年度

入手方法等

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内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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