調査シリーズNo.159
子育て世帯の追跡調査(第2回:2015年)
―生活変化を4年間追跡―

平成28年9月30日

概要

研究の目的

「子育て世帯の追跡調査」は、JILPT「子育て世帯全国調査2011、2012」に協力が得られた子育て世帯を対象に、複数時点にわたって、その生活状況や保護者(主に母親)の就業実態などを調査したものである。同一世帯に対する追跡調査を行うことにより、さまざまなイベント(出産、育児休業、資格取得等)が、就業等に与える影響をより正確に計測することが可能となる。本調査は、2011年と2012年に行った初回調査(Wave1)、2013年に行った第1回追跡調査(Wave2)に続き、第2回追跡調査(Wave3)となる。本調査の結果は、子育て世帯の今後の仕事に対する支援策のあり方を検討するための基礎資料として活用される予定である。

研究の方法

アンケート調査(全国)

  • (調査方法)訪問留置回収法
  • (調査期間)2015年11月~12月
  • (調査対象)JILPT「子育て世帯全国調査2011、2012」対象世帯の一部
  • (有効回収数/回収率)1,075世帯/81.5%

主な事実発見

子どもの成長に伴い、母親の有業率が顕著に上昇している。ふたり親世帯の母親の有業率はWave1の62.7%からWave3の74.5%へと、11.8ポイント上がっている(図表省略)。「専業主婦」を続けている母親は、全体の2割未満である。Wave1期からWave3期までの間に、就業状態が「無職」から「パート等」に変化した母親の割合は、母子世帯が6.6%、ふたり親世帯が16.3%を占めている(図表1)。

図表1 母親の就業形態の変化

(上段:世帯数、下段:構成比%)

図表1画像

注:父子世帯については、父親の就業形態変化に関する集計結果である。

自己啓発は、その内容によって、就業にもたらす効果が異なる。「(再)就職の準備に関する学習」を行った者は、労働供給の増加がより顕著である。「語学の学習」を行った継続就業者は、収入の上昇幅が比較的大きい。一方、「資格取得のための学習」を行った者は、労働供給の増加と収入の上昇がともに顕著である(図表2)。

図表2 母親における自己啓発と就業状況の変化(Wave1→Wave3)

図表2画像

注:(1) TypeⅠ変化: 無業→有業、パート等→正社員 ; TypeⅡ変化:有業→無業、正社員→パート等

(2)「なし」-Wave1からWave3までの期間において、自己啓発を「行っていない」。

「あり」-Wave1からWave3までの期間において、自己啓発を「行っている」。

専門資格の新規取得も、取得資格の種類によって、就業にもたらす効果が異なる。「教育・事務関係資格」の新規取得者は、労働供給の増加がより顕著である。「実用系資格」を新規取得した継続就業者は、収入の上昇幅が比較的大きい。一方、「医療・福祉関連資格」の新規取得者は、労働供給の増加と収入の上昇がともに顕著である。

図表3 専門資格の取得と就業状況の変化(Wave1→Wave3)

図表3画像

注:(1) TypeⅠ: 無業→有業、パート等→正社員 ; TypeⅡ:有業→無業、正社員→パート等

(2)「なし」-Wave1からWave3までの期間において、専門資格(除く自動車免許)の新規取得なし。

「あり」-Wave1からWave3までの期間において、専門資格(除く自動車免許)の新規取得あり。

(3)「医療・福祉関連資格」:医師、(准)看護師、薬剤師、介護福祉士、介護支援専門員、ホームヘルパー、保育士等。「教育・事務関係資格」:学校教員、医療事務、簿記資格、秘書士、珠算、パソコン関連資格等。「実用系資格」:理・美容師、調理師、保険・証券系資格、FP、建築士、社労士など。

政策的インプリケーション

  • 子どもの成長に伴い、母親の有業率が顕著に上昇しているが、就業状態が「無職」から「正社員」に変化した母親が非常に少ない。子育て女性に、正社員の労働市場に再エントリーできる環境の整備が必要である。
  • 子育て女性に対して、自己啓発や専門資格取得に関する情報、助言および経済的支援を提供することが女性活躍の推進策として期待できる。

政策への貢献

子育て世帯への就業・経済支援のあり方において、本調査の結果が貴重な基礎資料となる。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」

サブテーマ「女性の活躍促進に関する調査研究プロジェクト」

研究期間

平成27年度

執筆担当者

周 燕飛
労働政策研究・研修機構 主任研究員(企業と雇用部門)

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.85.4)。

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