調査シリーズNo.157
企業における外国人技能実習生の受入れに関する調査

平成28年5月31日

概要

研究の目的

  1. 技能実習生の技能習得状況、実習内容、評価、実習実施機関の賃金水準と実習生の賃金の実態の把握
  2. 技能実習生等の外国人労働者を受入れることによって、日本人労働者の賃金等労働条件に対する影響の把握

研究の方法

  1. 技能実習生を受入れている事業所・企業アンケート調査
  2. 企業ヒアリング調査

主な事実発見

  1. 技能実習生の受入れ理由は、「一定の人数の労働者を一定期間確保できるから」、「日本人従業員を募集しても応募がないから」、「日本人従業員を採用しても定着が悪いから」などが多い。
  2. 技能実習生の送出し国は、「中国」、「ベトナム」、「インドネシア」、「フィリピン」などが多い。
  3. 技能実習生の選抜要件では、「意欲、やる気」、「健康状態」、「人柄」、「仕事への取組み姿勢」、「年齢」などを挙げる企業が多い。また、選抜要件は職種により異なっており、他の業種に比べて繊維・衣服では「技能レベル」を重視し、長い経験年数を求めている。
  4. 技能実習生の配置は、「実習生一人一人の経験や技能レベルを考慮して配置している」、「簡単な作業工程からスタートし、高度な作業工程へと順番に配置している」、「複数の作業工程を経験できるよう、定期的に配置を変えている」などが多い。
  5. 技能実習で求められる技能レベルは、日本人の未経験者が「1年未満」でこなせる仕事のレベル、「1年以上2年未満」でこなせるレベルがといった回答が多い。
  6. 技能実習生の賃金は、「1年目」「2年目」「3年目」とも所定内給与で「12万円~13万円」「13万円~14万円」が多い。時給では「700円~750円」「800円~850円」が多い。

    技能実習生の賃金額の決め方は、5割近い事業所・企業が「監理団体が決めた方針にしたがっている」と回答しているが、「独自に決めている」という事業所・企業も4割以上ある。具体的な賃金水準は、「地域別最低賃金のレベルの額」が7割以上で、また、技能や能力によって賃金を加算する仕組みがある事業所・企業が2割弱あった。

  7. 技能実習終了時に到達する技能レベルは、「1人前の技能を持った日本人従業員の7~8割くらいのレベル」が4割以上、「1人前の日本人従業員と同等かそれ以上のレベル」が3割以上あった。
  8. 技能実習生の配置と実習終了時に到達する技能レベルの関係は、「複数の作業工程を経験できるよう、定期的に配置を変えている」、「実習生一人一人の経験や技能レベルを考慮して配置している」、「簡単な作業工程からスタートし、高度な作業工程へと順番に配置している」という場合に高い技能レベルに達している。

    なお、技能検定の上位級受験者は少数であった。

  9. 外国人技能実習生と同じ仕事、作業を行っている日本人労働者の所定内給与は、「15~20万円未満」、「10~15万円未満」、「20~25万円未満」などが多く、時給では、「800~850 円未満」、「750~800 円未満」、「700~750 円未満」などが多い。

    同じ仕事、作業の技能実習生と日本人労働者の賃金を比較すると、全体では日本人労働者の賃金が高い。

  10. 過去1年間の技能職の作業員、作業者の募集状況は、「募集した(募集中を含む)」というところが4割で、募集の際に提示した賃金額は、実習生の賃金より約30%高い。
  11. 技能実習生と同じ仕事、作業をする従業員を雇うことが可能な賃金額は、正社員では「実習生の賃金の1~3割増しくらい」、「実習生の賃金の3~5割増しくらい」が多い。また、パート・アルバイトでは「実習生の賃金の1~3割増くらい」、「実習生の賃金と同等の額」などが多い。
  12. 技能実習生と日本人従業員の弾力性を計算した結果、常用労働者、パート・アルバイトと技能実習生は、ほとんどの業種で補完的な関係にあった。

政策的インプリケーション

今後、技能実習3号が創設され、検定試験合格者が実習期間の延長を認められることになれば受検者数が増加すると思われる。そこで、技能実習生が修得した技能レベルを正しく評価することができるよう、技能検定試験の内容を適宜見直し、合わせて日本語能力試験なども活用することが求められる。企業には、技能検定試験の結果やそのほかの資格の取得状況、仕事や作業の成果に基づいて、技能実習生の技能を適切に評価し、それに応じた報酬を支払うことが求められる。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」
サブテーマ「アジアにおける労働社会の実情把握などグローバル化対応に関する調査研究プロジェクト」

研究期間

平成27年度

担当者

渡辺 博顕
労働政策研究・研修機構 統括研究員
中村 良二
労働政策研究・研修機構 主任研究員

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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