調査シリーズNo.151
改正労働契約法とその特例に、企業はどう対応しようとしているのか 多様な正社員の活用状況・見通しは、どうなっているのか
―「改正労働契約法とその特例への対応状況及び 多様な正社員の活用状況に関する調査」結果―

平成28年 5月31日

概要

研究の目的

①改正労働契約法の無期転換ルール(第18条)や、有期・無期契約労働者間の不合理な労働条件の相違禁止ルール(第20条)に対して、企業がどう対応しようとしているのか(有期契約労働者の雇用のあり方にはどのような影響が及ぶのか)、②改正労働契約法の特例(高度専門職の有期契約労働者及び定年後、継続して雇用される高齢者)はどの程度、活用されようとしているのか、③通算勤続年数が5年を超える有期契約労働者の無期転換等により、その増加が見込まれている多様な正社員の活用状況や今後のニーズ、雇用管理上の課題等はどうなっているのか等について把握する。

研究の方法

企業に対するアンケート調査

※常用労働者を50人以上雇用する全国の民間企業2万社を対象に実施。4,854社が有効回答。

主な事実発見

フルタイム契約労働者を雇用している企業、あるいはパートタイム契約労働者を雇用している企業を対象に、有期契約を反復更新して通算5年を超えた場合、労働者の申込みに基づき期間の定めのない労働契約(無期契約)に転換できるルール(第18条)について、どのような対応を検討しているか尋ねると、いずれも「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で無期契約に切り換えていく」がもっとも多く(フルタイム契約労働者を雇用している企業で45.4%、パートタイム契約労働者で50.8%)、これに「対応方針は未定・分からない」(同順に23.9%、26.9%)、「有期契約労働者の適性を見ながら、5年を超える前に無期契約にしていく」(同順に19.6%、11.1%)、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」(同順に6.0%、5.8%)等が続いた(図表1)。

前回調査と比較して、「対応方針は未定・分からない」とする企業や、無回答の割合が減少するとともに、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」と回答した企業の割合が半減し、その分、何らかの形(通算5年超から+5年を超える前に+雇入れの段階から)で無期契約にしていく企業の割合が、フルタイム契約労働者で23.9ポイント増の計66.1%、パートタイム契約労働者では27.6ポイント増の計63.1%と大幅に増大する結果となった。

図表1 無期契約転換ルールにどのような対応を検討しているか

図表1画像

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2015年4月に施行された「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」では、①高度な専門的知識等を有する有期契約労働者や、②定年後、引き続いて雇用される高齢の有期契約労働者について、その能力が有効に発揮されるような雇用管理上の措置に係る計画を申請し、都道府県労働局長に認定されれば、改正労働契約法に伴う無期転換申込権が一定期間、発生しないこととする特例が規定された。

全有効回答企業を対象に、こうした特例が設けられたことを知っているか尋ねると、「内容まで知っている」企業が18.3%みられる一方、「規定されたことは知っているが、内容まではよく分からない」が4割を超え(40.7%)、「知らない・分からない」も1/3超(33.7%)等となった(図表2)。

そのうえで現在、定年再雇用者を雇用している企業(81.9%)を対象に、特例の活用意向を尋ねると、「活用予定はない」が約6割(60.6%)となる一方、「既に計画を申請した」企業も1.9%みられ、「今後、活用予定・検討余地がある」企業が1/3を超えた(33.4%)。また、特例の「活用予定はない」とした企業を対象に、定年再雇用者の無期転換権にどう対応する意向かについても尋ねると「特段、何もしない(希望者は恐らくいない)」が半数弱(45.9%)となったのに対し、「通算5年を超えないよう契約管理する」企業も4割弱(37.2%)みられ、これに「就業規則や労働契約書で第二定年を規定する」(11.1%)等が続いた。

図表2 有期雇用特別措置法の認知度と特例の活用意向

図表2画像

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「多様な正社員」区分を今後、新たに導入(既にある場合は増員)する予定があるか尋ねると、73.9%の企業が「導入(増員)の予定はない」とする一方、「多様な正社員区分を今後、新たに導入(増員)する予定がある」とする企業も、2割程度(20.4%)みられた(図表3)。なお、これを雇用者の規模別にみると、導入(増員)予定がある企業割合は大規模になるほど高く、1,000人以上で37.2%となっている。また、主な業種別では、「宿泊業,飲食サービス業」や「医療・福祉」「生活関連サービス業,娯楽業」等で「導入(増員)予定」が多い。

多様な正社員区分を導入(増員)する理由としては(複数回答)、「景気回復や少子高齢化等に伴い、必要な労働力の確保に対する危機感が高まっているから」(52.8%)がもっとも多い。次いで、「非正社員からの転換を促し、優秀な人材を確保(囲込み)したいから」(36.6%)、「もっと女性や若者を採用・活用したいから」(31.8%)、「正社員の働き方を見直すため(長時間労働やメンタルヘルスの改善等)」(28.7%)等となっている。

一方、多様な正社員区分の導入(増員)の予定はないとした企業についても、その理由(複数回答)を尋ねると、「労務管理が煩雑・複雑になる」(52.7%)、「区分間の仕事や処遇・労働条件のバランスの取り方が難しい」(49.2%)が多く挙がり、これに「正社員と非正社員の違いが分かり難くなる」(30.2%)、「多様な正社員に対する従業員ニーズが見極めにくい」(23.3%)、「事業所数や事業範囲等が限定されている(多様な働き方を形成し難い)」(20.1%)等が続いた。

図表3 多様な正社員の今後の活用ニーズ

図表3画像

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政策的インプリケーション

  • 無期転換ルールへの対応方針については、前回調査に比べて無回答の割合等が減少し、その分、何らかの形で無期契約にしていくと回答した企業が大幅に厚みを増したものの、改正労働契約法の内容までの認知度は未だ約6割にとどまっており、対応方針は「未定・分からない」企業も、フルタイムあるいはパートタイム契約労働者を雇用する企業の各1/4程度みられた。対応方針を決める上で必要な支援には、「他社の事例・取組についての紹介」や「法の詳細についての情報提供」等が挙げられている。転換申込権の対象者が出始める2018年4月以降に向けて、こうした施策の梃入れを通じた一層の普及・啓発が求められる。
  • 改正労働契約法の特例への対応に関しては、有期雇用特別措置法の施行から3カ月を経過した時点での調査だったこともあり、内容までの認知度は1/6超にとどまった。また、1/3超の企業が、定年再雇用有期に係る特例を「活用のため既に計画を申請した/今後、活用予定・検討余地がある」としたものの、その1/4超は関係する労働者(労働組合等)からの意見聴取を「行っていない・今後行う予定もない」としている。特例の活用には、雇用管理に係る適切な措置の実施と、関係労働者の理解・協力を得る努力が求められるだけに、そうした意識啓発も含めた同法の普及が課題となっている。
  • 多様な正社員をめぐっては、「景気回復や少子高齢化等に伴う必要な労働力の確保に対する危機感」や「非正社員からの転換による優秀な人材の確保(囲込み)」等を目的として、今後、新たに導入(既にある場合は増員)する予定の企業が2割程度あるとの見通しが明らかになった。しかしながら、その導入(増員)に当たっては、「区分間の仕事や処遇・労働条件のバランスの取り方が難しい」ことや「労務管理が煩雑・複雑になる」ことのほか、(1)「多様な正社員」区分の限定性や処遇・労働条件等に係る、就業規則での規定率や本人への明示率が半数程度にとどまっていること、(2)事業所閉鎖等に伴う雇用上の取扱いについては、(就業規則や内規等での)規定率が7割を超える一方、「分からない・考えたことがない」ないし無回答となった企業も少なくないこと、(3)無限定正社員・多様な正社員間における転換制度・慣行の導入率は6割程度あるが、転換できる方向性など詳細については無回答(不明とみられる)企業も少なくないことなど、未だ多くの課題が残されている様子も浮き彫りになった。無期転換を含めた多様な正社員の拡大が、「正規-非正規の二極化の緩和」や「ワーク・ライフ・バランスの確保」等に資するものとなるよう、「多様な無期契約労働者」間でどう、処遇・労働条件のバランスを図っていくかも含めて、先導的なモデルを提示するなどしながら、併せて取り組みを進めていくことが重要だろう。

政策への貢献

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

課題研究
「改正労働契約法及び専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法への企業の対応状況に関する調査」
「多様な正社員制度の導入・活用状況調査」

研究期間

平成27年4月~平成28年3月

担当者

荻野 登
調査・解析部長
渡辺 木綿子
調査・解析部主任調査員補佐(執筆)

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問い合わせ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

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