調査シリーズNo.126
ものづくり企業の新事業展開と人材育成に関する調査

平成28年 2月29日

概要

研究の目的

わが国の製造業において、従業員規模300人未満の中小企業が占める割合は99%を超える。政府が産業競争力の強化に向け、「日本再興戦略」を推進するなか、こうした中小企業は、製造業の復活を支え、新規事業の創造に欠かせない産業基盤であるものの、大企業に比べ、採用・人材育成面などにおいて様々な制約を抱えている。本調査は、中小企業が採用・人材育成面等で抱える問題を明らかにするとともに、成長分野等で新事業を展開する際の、技能者の確保・育成に関する実態と課題の把握を目的とする。

研究の方法

①アンケート調査

調査方法:
郵送による調査票の配布・回収
調査対象:
製造業(プラスチック製品製造業、鉄鋼業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、はん用機械器具製造業、生産用機械器具製造業、業務用機械器具製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、化学工業)の従業員30人以上の民間企業10,000社を帝国データバンクの企業情報データベースから業種・規模別に層化無作為抽出。
有効回答数:
2,058社(有効回答率20.6%)

②インタビュー調査

調査方法:
訪問面接によるインタビュー
調査対象:
アンケート調査に回答した企業等から、新事業を展開している企業12社を選定。

主な事実発見

最近10年間に「新事業を展開したことがある、または展開中」と回答したものづくり企業の割合は約3割(28.9%)、「新事業の展開を検討中」(15.4%)も合わせると4割強(44.3%)の企業が新事業展開に積極的であることがわかった(図表1)。

図表1 新事業展開の状況(単位:%)

図表1画像

育成・能力開発の方針の違いによる新規事業展開への影響をみると、「人材育成・能力開発についてとくに方針を決めていない」人材育成に消極的な企業から、「個々の従業員が当面の仕事をこなすため必要な能力を身につけることを目的に能力開発を行っている」企業、「今いる人材を前提にその能力をもう1段アップできるよう能力開発を行っている」人材育成に積極的な企業、さらに「数年先の事業展開を考慮して、その時必要となる人材を想定しながら能力開発を行っている」と積極的かつ戦略的に人材育成を考えている企業まで、各段階にある企業それぞれの新規事業展開の状況は、積極度合が高まるほど「新規事業を展開したことがある、または展開中」の割合が高まっている(20.1%→25.8%→30.3%→34.1%)。逆に、積極度合が低くなるほど「新規事業を展開しておらず、展開する予定もない」割合は高くなっている(46.5%→53.7%→60.2%→63.9%)(図表2)。

図表2 能力開発の方針と新事業展開状況(n=2,058)

図表2画像

新事業を展開した企業の約半数(46.9%)が健康・医療・福祉関連分野、新エネルギー・環境関連分野などいわゆる「成長産業」を含む新たな産業分野へ進出。新事業展開を検討中の企業でも約4割(43.0%)が新たな産業分野への進出を見込んでいる。

新事業を展開した企業にその評価(経営への影響)を聞いたところ、約6割(58.7%)の企業は、「よい影響があった」と回答している。とくに従業員規模が小さいほど、「よい影響があった」の回答割合が高くなっており、「1000人以上」では約3割(29.4%)なのに対し、「300人未満」では約6割(60.4%)となっている。新事業展開の評価について、技能系正社員を対象とした教育訓練の成果との関係でみると、教育の「成果があがった」と回答した企業では、「よい影響があった」の割合が、「成果があがらなかった」とする企業よりも約10ポイント高くなっている。

政策的インプリケーション

新規事業を展開した企業割合は、人材育成に積極的で成果を挙げている企業で高くなっている。また、新事業を展開した企業に対し、どのようなことが課題となったか聞いたところ、「新事業を担う人材の確保が困難」をあげる企業の割合が46.1%とほぼ半数を占め、人材の確保・育成の重要性が示されている。新事業の展開を検討中の企業や展開する予定がない企業でも、「新事業を担う人材の確保が困難」をあげる割合がそれぞれ43.0%、38.5%と高く、人材の確保・育成が新事業展開の大きな障壁となっていることがわかる。このことから、中小企業等の新規事業展開を助け、製造業の活力を維持するためには、人材の確保・育成に関する支援が必要不可欠といえる。

政策への貢献

『平成25年度ものづくり基盤技術の振興施策』(「ものづくり白書」)で基礎データとして活用された。

本文

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研究の区分

緊急調査

研究期間

アンケート実査期間:
2013年11月26日(火曜)~12月12日(木曜)
インタビュー実査調査:
2013年9月~2014年4月

研究担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査・解析部次長
藤本 真
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
米島 康雄
労働政策研究・研修機構 前主任調査員補佐

入手方法等

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問い合わせ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

ご意見・ご感想

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