調査シリーズ No.130
「高度の専門的知識等を有する有期契約労働者に関する実態調査」結果

平成26年10月15日

概要

研究の目的

高度の専門的知識等を有し、一定の年収を得ている有期契約労働者の活用実態等を把握する。

研究の方法

アンケート調査※1 及び インタビュー調査※2を実施。

  • ※1:大規模企業100社を対象に、平成26年2~5月に実査。48社の有効回答を集計。
  • ※2:アンケート調査の回答企業から6社を訪問し、8職種11事例等を収集。

主な事実発見

  • アンケート調査で「高度の専門的知識等を有し、一定の年収(※)を得ている有期契約労働者」の雇用経験がある企業を対象に、具体的な内容を尋ねると、医師(産業医等)、薬剤師、通訳・翻訳、弁護士、公認会計士、社会保険労務士、一級建築士、技術士、土木・建築技術者、機械・電気技術者、特許発明者、デザイナー、アナリスト、システムエンジニア、アドバイザー、プロジェクトマネジャー、スポーツ選手、その他(研究・開発エンジニア、特殊なセールス等)などがあがった(外国人も含まれている)。契約期間は1年が多いが、勤続は最長15年にのぼり(平均5.2年)、平均年収の水準観としては1,075万円以上が半数弱(47.9%)を占めた。

    ※「一般的な業務の有期契約労働者より相当程度高い、社会的な相場観を勘案しつつ本人との交渉次第で決められるような年収水準」と定義。

  • 「高度の専門的知識等を有し、一定の年収を得ている有期契約労働者」を一定のプロジェクトに限定して活用するケースを対象に、改正労働契約法における無期転換ルールの適用が、緩和される(例えばプロジェクト期間中は猶予される等)とした場合の活用ニーズについても尋ねた。その結果、こうした特例が設けられれば「活用したいと思う」企業が、全有効回答企業の8.3%、「活用する可能性・活用を検討する余地はあると思う」が18.8%となり、現時点で明確な活用ニーズありは1割弱ながら、活用余地ありを含めると4社に1社超(27.1%)が、特例を活用(検討)する意向であることが分かった(図表)。

    図表 高度の専門的知識等を有する有期契約労働者に係る無期転換ルールの特例が設けられた場合の活用ニーズ

    図表イメージ

  • インタビュー調査によれば、無期転換ルールの特例が設けられた場合、例えば、①新製品の開発プロジェクト、②国や自治体との共同研究プロジェクト、また、③新規事業化の見極めに向けたプロジェクト、④M&Aや他社とのアライアンス実現に向けたプロジェクト、⑤業務の改革や会計制度・システムの変更等に伴うプロジェクトのほか、⑥受注案件や事業展開に応じたプロジェクトにより、(ⅰ)極めて特殊で高い専門性を持つ人材を雇用する場合や、(ⅱ)定年近くの年齢だが高い専門性を持つ人材を雇用する場合などに、活用が期待できそうである。

政策的インプリケーション

  • 高度な専門的知識等を有し、一定の年収を得る有期契約労働者を、プロジェクト等に必要な期間を見極めながら活用したい、という企業ニーズは確かにあった。特例の設定に当たっては、その多様性や特殊性に配慮してもらいたい、とする企業ニーズが聴かれた。
  • ただ、特例が実現すればプロジェクトに必要な期間として、有期契約の反復更新による継続雇用が最長10年にも及び得るだけに、(契約満了時に備えて)能力の維持向上を図るための機会をどう確保するかが重要な課題になる。また、特例に該当する有期契約労働者への説明のあり方や、契約トラブルの回避方法等についても示していく必要性が示唆された。

政策への貢献

労働政策審議会労働条件分科会有期雇用特別部会(平成26年12月18日)資料等のほか、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法第3条に基づく基本指針(「事業主が行う特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置に関する基本的な指針」)に引用された。

本文

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研究の区分

緊急調査

研究期間

平成26年1月~6月

担当者

荻野 登
調査・解析部長
渡辺 木綿子
調査・解析部主任調査員補佐(執筆)

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