調査シリーズ No.128
「人材マネジメントのあり方に関する調査」および「職業キャリア形成に関する調査」結果
―就労意欲や定着率を高める人材マネジメントとはどのようなものか―

平成27年 2月24日

概要

研究の目的

本調査は、企業の動向を把握するため、毎年テーマを変えながら実施しているもの。今回は、少子高齢化等に伴い労働力人口が減少するなか、①人材活用の今後の見直しの方向性、②管理職マネジメントや職業キャリア形成のあり方の変化、③雇用管理や人材育成の実施状況とその課題――などをテーマに設定した。

研究の方法

企業とそこで働く正社員ミドルマネジャーを対象に、アンケート調査を実施した。調査対象は、民間信用調査機関が所有する企業データベースを母集団として、産業・規模別に層化無作為抽出した、全国における従業員規模100人以上の企業1万社と、そこで働く正社員ミドルマネジャー5万人である。有効回収数は、企業1,003社(10.0%)、正社員ミドルマネジャー4,227人(8.5%)だった。

主な事実発見

①人材活用の今後の見直しの方向性
  • 雇用に対する考え方

    雇用に対する考え方について、対照的な組み合わせをいくつか示し、それぞれどちらに当てはまるかを尋ねた(図表1)ところ、正社員については引き続き「長期雇用は維持する」企業が9割弱(88.8%)を占め、「柔軟に雇用調整していく」(2.0%)を大きく上回った。

    非正社員に対する考え方も同様で、「できるだけ長く雇用する」考えの企業が約3分の2社(65.4%)にのぼったのに対し、「非正社員は人材の入れ代わりを促進する」は6.2%にとどまった。

    そのうえで、今後の要員管理については、「賃金・労働時間の柔軟な調整が重要」と考える企業が約半数(48.6%)で、「雇用者数の柔軟な調整が重要」とする企業(12.1%)を大きく上回った。

図表1 雇用に関する考え方

図表1画像

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  • 雇用ポートフォリオの変化

    従業員全体に占める【無期契約の社員】割合の、向こう5年間の増減見通しを尋ねると、「横ばいで推移する(増減はほとんどない)」とみる企業が30.7%となったものの、「現状より(やや)増加する(と思う)」企業も26.6%で4社に1社を超えた(図表2)。

    また、【無期契約の社員】割合が「現状より(やや)増加する(と思う)」と予測した企業に対し、さらに同社員に占める正社員(限定正社員を含む)の割合の増減見通しを尋ねたところ、最多は「現状より(やや)増加する(と思う)」企業で約6割(59.9%)にのぼった。次いで、無期契約の社員割合は増えるが、正社員割合は「横ばいで推移する(増減はほとんどない)」とみる企業(16.1%)が多く、これに無期契約の社員割合は増えるものの、正社員割合は「現状より(やや)減少する(と思う)」との回答(11.6%)が続いた。

図表2 向こう5年間における無期契約の社員割合と正社員割合の増減見通し

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  • 多様な正社員の可能性

    既存の正社員より働き方を限定したり、非正社員より働き方を拡大しつつ処遇も改善するなどして、社会的に「多様な正社員」(いわゆる「限定正社員」)層を形成していこうとする議論があることを踏まえ、自社における「多様な正社員」の可能性をどう考えるか尋ねたところ、2割弱(19.1%)の企業が「多様な正社員区分を新設(既にある場合は拡充)することを検討し得る」と回答した(図表3

    業種別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」や「金融業、保険業」「情報通信業」「生活関連サービス業、娯楽業」などで4社に1社を超え、従業員規模別では「1,000人以上」で3割強(1万人以上では半数弱)にのぼった。

図表3 多様な正社員を新設・拡充する可能性

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「多様な正社員区分を新設(拡充)することを検討し得る」理由としては(複数回答)、多い順に「改正労働契約法による通算5年勤続後の無期転換に対応しなければならないから」(44.3%)、「少子高齢化が進展するなか、必要な労働力をいかに確保するかに危機感を持っているから」(42.7%)、「働き方や処遇等を限定した多様な正社員なら雇用の余地があるから」および「非正社員からの転換を促進し、優秀な人材を確保することができるから」(ともに41.7%)などとなった(図表4)。

図表4 多様な正社員の新設・拡充を検討し得る理由

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② 管理職マネジメントのあり方の変化
  • 管理職の育成・登用上、近年感じている課題

    管理職の育成・登用上、近年感じている課題を尋ねると(複数回答)、「世代等により管理職候補者の能力・資質にムラがある(質的確保が困難な世代がある)」が最多で、半数を超えた(52.9%)(図表5)。

図表5 管理職の育成・登用上、近年感じている課題

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  • 早期選抜の実施状況

    将来の管理職や経営幹部の育成を目的にした「早期選抜」の実施状況を尋ねると、「行っておらず、導入予定もない」企業が約6割(58.9%)を占めた。現に「行っている」企業は6社に1社程度(15.4%)にとどまったものの、「導入を検討中」(22.1%)と合わせると4割弱(37.5%)にのぼる(図表6)。

    これを海外事業を「展開している」企業(全体の17.1%)だけでみると、早期選抜の実施率は4社に1社を超えており(26.2%)、「導入を検討中」(25.0%)と合わせると半数超(51.2%)を占めている。

    早期選抜者を対象に実施している育成メニューについては(複数回答)、「多様な経験を育むための優先的な配置転換(国内転勤含む)」(53.9%)、「特別なプロジェクトや中枢部門への配置など重要な仕事の経験」(51.9%)、「経営幹部との対話や幹部から直接、経営哲学を学ぶ機会」(48.7%)などが上位にあがった。

    これらを一般的な管理職に対する実施率と比較すると、優先配置については21.4ポイント、重要な仕事経験は29.8ポイント、幹部との対話では17.5ポイントの大きな差が開いた。正社員の間でも、早期選抜者に選ばれるかどうかで、その後の経験機会に大きな格差を生じる様子が浮き彫りになっている。

図表6 早期選抜の実施状況とその内容

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政策的インプリケーション

  • 雇用者に占める非正規の職員・従業員比率が四半世紀でほぼ倍増し、直近では37.9%まで高まるなか、今回の調査では向こう5年間に(無限定)正社員や限定正社員といった【無期契約の社員】への「揺り戻し」が図られる可能性が示唆された。
  • 少子高齢化に伴う労働力人口の減少への対応と、経済の持続的成長による経済の好循環との両立が喫緊の課題となる中で、労働生産性の向上が必須となっている。本調査では、就労意欲を高める人材マネジメントとはどのようなものかについて考察し、雇用管理事項や人材育成項目として何を実施するか、また、それらをどう組み合わせるかによって、従業員の就労意欲や人材の定着率も左右される可能性があることを指摘した。

政策への貢献

  • 内閣府規制改革会議 第27回雇用ワーキング・グループの参考資料として引用
  • 「平成26年版 労働経済の分析」で多数引用
  • 第1回 雇用政策研究会の資料として引用
  • 経済の好循環実現に向けた政労使会議(第2回)の労働者側委員提出資料として引用

本文

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研究の区分

平成25年第4四半期要請の緊急調査

研究期間

平成25年12月~平成26年11月

執筆担当者

荻野 登
労働政策研究・研修機構 調査・解析部 調査・解析部長
渡邊 木綿子
労働政策研究・研修機構 調査・解析部主任調査員補佐