調査シリーズ No.117
若年者雇用支援施策の利用状況に関する調査
(ハローワーク求人企業アンケート調査)

平成26年3月31日

概要

研究の目的

本報告は、ハローワーク求人企業に対するアンケート調査の結果の概要を速報としてまとめたものである。本調査の目的は、政府による近年の若年者雇用支援施策の認知・利用状況、およびこれら施策に対する評価を把握することにある。調査結果は今後の若年者雇用支援施策の改善に向けての参考資料とする。

研究の方法

調査対象
2011年4月1日~7日、9月1日~7日、2012年2月1日~7日の3期間のいずれかにおいて、ハローワークへ支援策等の活用により若年者を主な募集対象とする常勤の求人票を提出した全国の企業から10000社を抽出した。回答は採用担当者に依頼した。
調査期間
平成25年1月~2月(原則として1月1日時点の状況を調査)
調査方法
質問紙調査(郵送式)
有効回収数
3,787社(有効回収率37.9%)

主な事実発見

  1. 認知・利用状況と評価
    ①「知っている」企業の割合

    採用奨励金は5~7割弱、ハローワークが主催する就職面接会(以下「就職面接会」)は4割強、キャリア形成促進助成金、ジョブサポーターによる個別紹介(以下「ジョブサポーター」)、ジョブ・カード制度を活用した雇用型訓練(以下「雇用型訓練」)は2割弱。ジョブ・カード(応募書類として活用)、新卒者就職応援プロジェクトによる職場実習(以下「就職応援プロジェクト」)は1割強。ドリームマッチプロジェクトは1割未満。概ねどの施策も規模が大きいほど、また製造業や情報通信業で高い。

    ②「利用した」企業の割合

    3年以内既卒者トライアル雇用奨励金・試行雇用奨励金は3割強、3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金・就職面接会は約2割、他は1割未満。概ねいずれの施策も情報・通信業で高く運輸業で低い傾向。規模ごとの傾向は施策ごとに異なる。

    ③「有益であった」と答えた企業の割合

    各種採用奨励金は6~7割弱、就職面接会と雇用型訓練は5割強、ジョブサポーターと就職応援プロジェクトは無回答が著しく多い。

  2. ハローワークが主催する就職面接会等

    「応募増」と「求職者との直接交渉」が主な利用目的。利用率の高い医療・保健衛生・福祉は「利用したが応募がなかった」、大企業や情報・通信は「応募はあったが採用しなかった」傾向が高い。施策に対する評価を高めるのは「採用の成立」と「来場・応募数の多さ」である。

  3. ジョブサポーターによる若年者の個別紹介

    無回答が多く、「詳細な条件を設定した募集」「社員の定着促進」といった積極的利用理由を挙げる企業は少ない。一方、本施策の評価を高める最大の要因は「条件にあった人を紹介してもらえた」ことで、ただ紹介件数が多いだけでは評価は高まらない。

  4. 採用奨励金

    全ての奨励金ともに、利用理由は「ハローワーク職員に紹介されたから」「助成金が得られるから」「試用期間中に人材を見極められる」が他に突出し、受給条件を備えた候補者を評価する際に評価基準を「緩めた」企業は2割前後である。トライアル期間満了後の正規雇用への移行率は、3年以内既卒者トライアル雇用奨励金、試行雇用奨励金ともに7割強。

  5. ジョブカード制度を活用した雇用型訓練

    認知率・利用率ともに低いが無回答は少ない。明確な意思をもって能動的に利用されていると思われる。

図表1 各若年者雇用支援施策を「知っている」企業の割合(N=3787)

図表1画像

図表2 各若年者雇用支援施策の認知状況別にみた「利用した」企業の割合

図表2画像

政策的インプリケーション

  1. ハローワークが主催する就職面接会等については、参加企業の業種や規模によって応募数や採用成否の差がみられる。特定の業種・職種に限定した面接会の実施や、求職者への周知の強化が必要。
  2. ジョブサポーターが企業の詳しい求人内容を聞き取った上で条件に合う若者を個別に紹介する取り組みについては、まずは一層の周知と趣旨の浸透が必要。施策への評価を決定するマッチング精度を高めるには、ジョブサポーターによる企業理解・若年者理解のさらなる強化が必要である。
  3. 採用奨励金の利用理由として〔ハローワーク職員に紹介されたから〕が突出したことは受動的な利用が多いことを示唆する。ただし〔試用期間中に人材を見極められるから〕を挙げる企業も多く、トライアル雇用奨励金の趣旨とその利点(若年者等を有期雇用で試行的に雇用し、育成を経て正規雇用に移行させることを目指す制度。企業にとっては、育成に要する費用負担が軽減される点と、有期雇用期間に正規雇用に適した人材か否か判断できる点に利点がある)を理解した上で利用している企業も少なくない。採用奨励金は、若年者を雇用した企業に経済的メリットが直接もたらされるため高い評価を得ている。一方で、本施策をより有効に運用するためには、受動的な利用を減らし、企業に施策の趣旨を十分理解した上での利用を一層促す努力が必要だろう。
  4. ジョブカード制度を活用した雇用型訓練については、認知率・利用率は低いが、利用企業からは一定の評価を得ている。まずは認知率を上げる努力が必要である。

政策への貢献

本調査シリーズは、既存の施策の実施状況の把握及びその評価、またハローワーク等における業務運営など、職業安定業務全般に貢献するものと思われる。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「経済・社会の変化に応じた職業能力開発システムのあり方についての調査研究」

サブテーマ「若年者の職業への円滑な移行に関する調査研究」

研究期間

平成24年~26年度

執筆担当者

岩脇 千裕
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
堤 孝晃
労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員
小杉 礼子
労働政策研究・研修機構 特任フェロー
金崎 幸子
労働政策研究・研修機構 統括研究員

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