調査シリーズ No.82
定年後の働き方と対処行動―働く人の知恵と工夫―

平成23年3月23日

概要

研究の目的と方法

定年退職に伴う条件・環境の変化が定年退職後に働く労働者の意識と仕事への取り組みにどのような影響を与えるかを明らかにし、定年退職を経験した者が快適に職業能力を発揮できる要因を探ることを目的とした。アンケート調査及びヒアリング調査を実施した。

主な事実発見

(1) 定年後の再就職先と再就職ルート

[1] 男女ともに60歳以降は定年のない企業で働くことが多くなる。定年制がない企業に働く60歳以上の労働者が実際に当該企業で働いていられると考える期間は「身体が続く限りずっと」が過半数だが、上限年齢を予測する者は35.5%ある。その場合の上限年齢は65歳までと70歳までが多い。

[2] 60歳で定年退職して次の職場を得たルートは、男性は多い順に「定年でやめた会社」 (43.4%)、「自分で探して採用された会社」(33.5%)、「定年前の会社の世話でいった別の会社」(12.7%)、「起業した自分の会社」1.6%、「親族が経営する会社」0.8%となる。女性は「定年でやめた会社」は23.3%、定年前の会社の世話で別の会社にいった者はゼロである。

(2)定年後に働いている労働者の自己評価―前向きの言葉で自己表現できる条件

「今の私の働き方は(   )だ。だから、私は(  )している。」という文章の(  )内に記述された言葉を分析した。前段の(  )は「働き方の自己評価」で、後段の(  )は自己評価に基づく働く上での「態度・行動」となる。 

「働き方の自己評価」は、"自由、自然体"、"満足、快適、楽、理想"、"条件的合理性、適正さ"、"自己肯定、社会的承認"、"不本意、苦痛"、"その他"の概念で自己表現するグループに分けられた。また、「態度・行動」は"自由、自然さの享受"、"環境、適応の成功"、"合理性確保の行動""社会的承認"、"自己肯定の成功"、"不本意、苦痛の忍従"、"その他"に分けられた。男性の定年退職経験者のみを取り出して分析すると、「働き方の自己評価」及び「態度・行動」と定年後の就職ルートや働く条件は意味のある関係がみられた(図1図2)。

図表1 態度・行動と働き方、条件等

図表1 態度・行動と働き方、条件等/調査シリーズNo.82


図表2 再就職ルート、自己評価と態度・行動の関係

図表2 再就職ルート、自己評価と態度・行動の関係/調査シリーズNo.82

(3) 納得して働くことと再就職確保の道程

定年後の職場への道は技術・技能系の者は、定年退職した会社での実績をベースとして拓けた。定年後は仕事の改善・工夫を自発的にすることによって働く意義を見出している。管理・事務系のいわゆるホワイトカラーは現役時代の仕事の与えられ方とその中での人との出会いによって定年後の道が変わるが、現役時代の業務に関連した人的ネットワークと自己啓発等の活動が定年後の仕事につながっていた。

政策的含意

定年退職後に働く労働者と企業が雇用契約を結ぶ際には、働く条件の中で労働者が最も重視するものが何かを把握する手続きを踏むとよい。それによって総合的にみた仕事をすすめる条件をどのように労働者が考えているかを把握すると、労働者に働く上での快適さや満足感を与える条件設定が可能になる。採用後も、雇用契約時に一旦決定した働く条件を定期的に更新するなどの管理手法は有効である。労働者は企業の雇用管理方針に呼応して「合理性確保の行動」をとる。他方、労働者のキャリア形成は職場で与えられた仕事との出会いに左右され、定年退職後の働き方にも影響を与えている。労働者には自主性が、企業側には従業員の育成という観点からの仕事の与え方及び社外での自己啓発行動の動機付けを行う施策が必要になる。公的年金に期待する定年後の収入の見通しは働き方の選択を大きく変える。この面での雇用のセーフティネットとは何かを検討する必要がある。

政策への貢献

現在は団塊の世代が定年を迎える時期である。今後の少子高齢化による労働力人口が減少するなかで、これらの人口構造の中で大きな割合を占めるこれらの人々が職業キャリアのラスト・ステージで納得した働き方をするための基礎的条件を提示した。

本文

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執筆担当者

奥津眞里
労働政策研究・研修機構 特任研究員

研究期間

平成22年度

入手方法等

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