労働政策研究報告書 No.184
現代先進諸国の労働協約システム―まとめと論点―

平成28年5月31日

概要

研究の目的

現代先進諸国(ドイツ・フランス・スウェーデン)における労働協約システムの現状と、同システムに基づく規範設定の実態を明らかにするとともに、3カ国での比較検討を行うことで各国間における共通点と相違点を浮かび上がらせる。

研究の方法

文献調査
現地ヒアリング調査

主な事実発見

本研究により、各国における労働協約システムおよびそれに基づく規範設定の共通点と相違点が、以下の通りに明らかとなった。

消極的な国家の関与型(ドイツ・スウェーデン)

ドイツとスウェーデンは、いくつかの共通する点が見られる。1つは、フランスと比べると、国家の関与が限定的なことである。2つは、産業別協約が、労働条件の最低基準を定める以上の意味を、持っていることである。ドイツでは、産業別協約において決められる賃金等級は、そのまま企業の賃金等級となる。スウェーデンでは、産業別協約は、最低賃金に加えて、事業所における平均賃上げ率に関する規定も設けている。このように、産業別協約は、企業の人事・賃金制度に対して、単に最低基準を設定している以上の意味を持っている。

しかしながら、どのレベルに労働条件決定の主要なステージを置くのかという点で、両国には相違が見られる。ドイツは産業レベルであり、スウェーデンは企業レベルである。賃金に関わる協約の具体的な内容は、この点を如実に表す。スウェーデンでは、賃金等級の数や賃率は、企業レベルで決められている。ドイツでは、産業レベルで決められている。能力査定制度もしかりである。スウェーデンでは、この部分の賃金は、企業レベルで決められている。ドイツでは、産業レベルで決められている。

とはいえ、この相違の根底には、共通部分もあると思われる。すなわち、労働組合が組織化できる末端のレベルに、労働条件決定の主要なステージが置かれているという点で、両国は共通している。

積極的な国家の関与型(フランス)

その一方で、フランスの産業別協約は、労働条件の最低水準を定めているものである。その意味では、個別企業の賃金等級や等級毎の賃率に対して、産業別協約が直接的な規定を必ずしも設けているとは言えない部分がある。この点は、ドイツやスウェーデンとは異なる部分である。

また、その規範設定において、国家の果たしている役割が、他の2カ国と比べると大きい。近年見られる、最低賃金の改定が、協約賃率の改定に影響を及ぼす場合もあることは、フランスの特徴を一層際立たせるものだと思われる。また、能力査定部分への組合の関与の弱さから、上記の2ヶ国に比べると、組合の団結力維持に対する関心の低さが窺われる。

以上を踏まえ、各国の特徴を表にまとめると次のようになる。

図表 3カ国の特徴

図表

政策への貢献

公表結果は厚生労働省資料として各種政府会議で活用される予定である。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する調査研究」

サブテーマ「規範設定に係る集団的労使関係のあり方研究プロジェクト」

研究期間

平成27年度

執筆担当者

西村 純
企業と雇用部門研究員
山本 陽大
労使関係部門研究員
細川 良
労使関係部門研究員

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