労働政策研究報告書 No.170 仕事と介護の両立

平成27年5月29日

【記者発表】「仕事と介護の両立に関する調査」 結果速報(PDF:102KB)

概要

研究の目的

介護離職をはじめとする仕事と介護の両立困難の実態と両立支援の課題を明らかにするため、介護期の働き方や両立支援制度の利用状況、離転職の経験、要介護者の状態や家族との介護分担、介護サービスの利用状況、介護者の健康状態等を調査する。

研究の方法

アンケート調査。調査の概要は以下のとおり。

調査対象

同居および別居の家族・親族を介護している20~59歳の男女2,000名

主な調査項目

  • 介護開始時と介護状況(要介護者の状態、本人の介護役割、介護負担等)
  • 介護開始時の就業状況(労働時間、異動、離転職、両立支援制度等)
  • 現在の介護状況(要介護者の状態、本人の介護役割、介護負担等)
  • 現在の就業状況(職務の性質、仕事のパフォーマンス、両立支援制度等)

調査法

調査票の配付と回収(調査会社の登録モニターに対するWEBアンケート調査。)

回収結果

2,000件の有効回答が得られるまで、調査会社の登録モニターに調査協力を依頼。なお、回答者の属性の偏りを補正するため、性・年齢別の就業率・雇用形態割合と男女別の職業分布が、「平成24年度就業構造基本調査」(総務省)において家族の介護をしている者の構成比率に近似するように2000件を比例配分して回収。

調査実施時期

 2014年9月19日・金曜~10月1日・水曜

調査委託先

株式会社日本リサーチセンター

主な事実発見

  1. 男女にかかわらず自分の親を介護する「実子介護」や、若年層による祖父母の介護など、介護者の多様化を背景に、伝統的な介護者である中高年女性に多い非正規雇用だけでなく、正規雇用にも介護は広がりつつある。
  2. 勤務先に介護休業制度がある場合は、離転職割合が低くなる(図表1)。だが、何か月もの長期にわたる休業のニーズは低い。介護者の多くは、短期の休業や休暇、残業のない働き方、就業時間中の中抜けなど、必要に応じて柔軟に働き方を調整する方法で仕事と介護の両立を図っている。

    図表1 介護開始時勤務先の離転職割合
    ―介護開始時勤務先の介護休業制度の有無別―

    図表1画像

  3. 男性は、加齢にともなう業務への取組意識や能力開発意欲の低下傾向が女性よりも顕著である。働く介護者が高い就業意欲をもって仕事と介護の両立を図ることができるためには、両立支援制度の整備とともに、上司による職場マネジメントが重要である。
  4. 通常どおりに出勤している介護者においても、帰宅後や休日の介護によって疲労やストレスが蓄積している可能性がある。介護疲労や介護ストレスは、仕事中の居眠りやイライラ・気分の落ち込みといった勤務態度の問題、不注意によるミスや重大な過失・事故を起こしそうになる「ヒヤリ・ハット経験」といった作業の正確性の問題、スケジュールの遅れや目標未達成といった仕事の成果の問題のそれぞれにおいて、仕事に好ましくない影響を及ぼしている(図表2)。

    図表2 仕事の能率低下に係る諸経験割合
    ―介護による肉体的な疲労の有無別―

    図表2画像

政策的インプリケーション

今後の仕事と介護の両立支援の課題として、以下のようなインプリケーションを得ることができる。

  1. 介護休業の分割取得や残業の免除、始業・就業時刻の変更、就業時間中の「中抜け」など、仕事と介護の両立を柔軟に図ることのできる両立支援制度と働き方の構築
  2. 介護者の就業意欲の低下や健康状態の悪化など、仕事に好ましくない影響を及ぼす両立困難に対応するため、従業員の介護の実態を会社が把握する仕組みの構築

政策への貢献

平成27年1月23日「第4回今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」で調査結果を報告。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」

サブテーマ「仕事と生活に関する調査研究」

研究期間

平成26年度

執筆担当者

池田 心豪
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
高見 具広
労働政策研究・研修機構 研究員
松原 光代
学習院大学 客員所員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.155)。

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