労働政策研究報告書No.163
求職者支援制度に関する調査研究
―訓練実施機関についての調査・分析―

平成26年 5月30日

概要

研究の目的

平成23年10月から施行された求職者支援法に基づく求職者支援制度は、施行後3年を目途として、施行状況を踏まえた検討を行うことが法に規定されている(求職者支援法附則第十三条1)。その検討に向けて、本調査研究は訓練の実施や求職者の就職支援において中心的な役割を果たす訓練実施機関を対象とし、 (1) 訓練実施プロセスの管理、 (2) 就職支援活動などについて、アンケート調査・ヒアリング調査を通じて実態を把握の上、調査結果を基とした分析を試みた。

研究の方法

  1. 求職者支援訓練を担当する民間の事業所(以下「機関」と記載)に対するアンケート調査の集計・分析。 (平成24年11月実施。対象は平成24年4~9月の間に終了した求職者支援訓練を実施していた全機関。有効回答数1,376[有効回答率:53.7%])。

  2. 17機関に対するインタビュー調査(平成24年11月~平成25年3月)の実施。

主な事実発見

  1. 求職者支援訓練は、より多くの職種に共通する基礎能力を習得するための「基礎コース」と、特定の職務に必要な実践能力を習得するための「実践コース」の2つのコースからなる。それぞれのコースの実施機関に、訓練の状況をたずねたところ、いずれも6~7割の実施機関が「訓練内容に対する受講者の評価は高い」と感じている。一方で、「実施のためのコストや労力について、事業所にとっての負担が大きい」、「訓練や就職支援のほか、生活全般への指導など受講者に対するきめ細かな働きかけの必要性が高い」といった課題を認識する機関も6~7割前後と多数を占める。
  2. 求職者支援訓練で訓練中に行うこととされているキャリア・コンサルティングについては、73.8%の機関が、受講者1人当たり「3回」というケースが最も多いと回答している。また、訓練期間中に履歴書・エントリーシートの作成に関して行う指導の回数は、受講者1人当たり「3~5回」という機関が55.3%で最も多く、面接指導については、受講者1人当たり「1~2回」が44.9%、「3~5回」が46.6%となっている。受講者の就職支援の取組みとしては、「仕事に就く事や働く事に関する考え方の指導」を実施しているところが約9割と最も多く、同程度の回答割合で「就職先に関する具体的な情報の収集・提供」が続く(図表)。

図表 受講者の就職支援の取組み(複数回答、単位:%)

図表画像

図表拡大表示

※リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。

  1. 基礎コースの就職実績は、機関内のキャリア・コンサルティングや就職支援の体制整備に関して、 (1) キャリア・コンサルタントの研修参加や資格取得を奨励して専門性を高める、 (2) キャリア・コンサルタントと講師がよく連携して情報交換する、 (3) 必須のコンサルティングを就職支援責任者が行う、 (4) 就職相談をしやすい体制を整備する、といった取組みを行っている機関において良かった。また、受講者に対し地域や業界の労働市場情報を的確に提供すること、職場見学を実施すること、面接指導を数多く行うこと、機関の外で開催される合同説明会参加者の募集・引率を行うことが、就職率の向上につながっていた。
  2. 実践コースの就職実績向上に対しては、 (1) キャリア・コンサルタントの研修参加や資格取得を奨励して専門性を高めること、 (2) キャリア・コンサルティングを訓練の開始の序盤、中盤、終盤と一定の間隔をあけて行うこと、 (3) 就職相談に訓練担当の講師がそのつど対応すること、 (4) キャリア・コンサルタント以外のスタッフが就職支援に協力的であること、といった機関の取組みや状況が寄与している。

    また、求人開拓を担当するスタッフを置くこと、機関の外で開催される合同説明会参加者の募集・引率を行うことといった取組みや、地域や業界の労働市場に関する説明・情報提供を行うといった取組み、履歴書・エントリーシートの作成や面接に関する指導を数多く行うことも、実践コースの就職実績の向上につながっている。

政策的インプリケーション

  1. 受講者の就職実績を左右する取組みについての分析からは、キャリア・コンサルタントの能力を高めることが、最終的に就職状況の改善に寄与すると推測された。多くの訓練実施機関では登録キャリア・コンサルタントが相談支援を担っていると思われるが、登録キャリア・コンサルタントの訓練時間は短く、これを補うような研修機会の充実が求められる。
  2. また同じく受講者の就職実績に関する分析からは、受講者に対し地域や業界の労働市場に関する説明や情報の提供を行うことも就職状況の改善に寄与することが推測される。機関がこうした労働市場情報を提供することの重要さについて認識を深め、その提供を行うように促すとともに、ハローワークや労働局側も、各機関の訓練状況を理解した上で適宜情報を提供していくことが求められる。

政策への貢献

調査・分析結果は、厚生労働省労働政策審議会・能力開発分科会における審議において基礎資料として活用され、今後の求職者支援制度のあり方についての報告書(平成25年12月27日能力開発分科会発表)に反映されている。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「経済・社会の変化に応じた職業能力開発システムのあり方についての調査研究」

サブテーマ「能力開発施策のあり方に関する調査研究」

研究期間

平成24~25年度

執筆担当者

藤本 真
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
小杉 礼子
労働政策研究・研修機構 特任フェロー
金崎 幸子
労働政策研究・研修機構 統括研究員
山口 塁
労働政策研究・研修機構 臨時協力研究員
小川 豊武
労働政策研究・研修機構 臨時協力研究員

入手方法等

入手方法

刊行物のご注文方法をご確認ください。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。