労働政策研究報告書No.130
契約社員の人事管理と就業実態に関する研究

平成23年3月25日

概要

研究の目的と方法

  • 本研究の目的は、契約社員(直接雇用のフルタイム有期契約労働者から定年後再就職者を除いた者、と定義)の人事管理と就業実態について実証的に研究することで、かれらの処遇の向上および雇用の安定のために求められる対策について含意を得ることである。
  • 契約社員に注目する理由としては、(1)「改正パートタイム労働法」と「労働者派遣法」の間隙に置かれ、その適切な活用と労働条件の整備について特別に定める法律が存在しないこと、(2)その多くが現在の仕事に対して相対的に強い不満を抱いていることが既存統計より示唆されること、(3)それにもかかわらず先行研究が乏しいこと、があげられる。
  • 上記の目的を達成するため、2009年度に実施した企業ヒアリング調査(資料シリーズNo.65参照)に加え、2010年度に実施した個人ヒアリング調査、事業所・従業員アンケート調査の結果を用い、総合的な分析・考察を行った。

主な事実発見

  • 契約社員を1つの集団と捉えると、(a)他の非正規雇用者と同様に雇用が不安定である、(b)特に、賃金水準、正社員との賃金格差に強い不満を抱いている、(c)現状を不本意な状態と考え正社員転換を希望する者が多い、といった特徴が浮かび上がった。
  • (a)の問題に対応して、雇用契約の期間と更新方針に係わる分析を行ったところ、雇用契約が短期的であるほど契約社員の雇用不安が高まり会社業績貢献意欲やスキル向上意欲が低下すること、事業所側の更新方針が不明確であるほど契約社員の雇用不安が高まり離職意向が強まること、が明らかになった。
  • (b)の問題に対応して、賃金水準と賃金格差に係わる分析を行ったところ、契約社員の賃金は正社員の賃金に比べて平均値が低く年齢にともなう上がり方も小さいこと、契約社員は同じ勤め先で同じ仕事をしている正社員との賃金格差が小さいほど積極的に職業能力開発に取り組むようになること、が明らかになった。
  • (c)の問題に対応して、正社員登用制度に係わる分析を行ったところ、正社員登用制度が存在すると、契約社員の雇用不安が低下し会社業績貢献意欲やスキル向上意欲が高まることが明らかになった。
  • ただし、契約社員の就業実態は多様である。図表の通り契約社員を職種、年齢、生計の担い手か否かによって4つに分類すると、「専門職型」は相対的に賃金水準、仕事満足度が高い、「若年型」は正社員転換希望が強い、「家計補助型」は賃金水準が低くそれに対する不満も強い、「生計維持型」は雇用の安定を強く希望しつつも同年代の正社員との賃金格差が大きいこともあり正社員としての再就職が困難な状況にある、といった特徴がみられた。

図表 契約社員の就業類型

図表 契約社員の就業類型/労働政策研究報告書No.130

政策的含意

  • 「必要以上に短い期間」の労働契約を締結しないよう配慮することを定める労働契約法、労働契約の「更新の有無」および「判断の基準」を明示するよう定める厚生労働大臣告示の運用をより確実なものにすることなどが求められる。
  • パートタイム労働者だけでなく、フルタイムの有期契約労働者についても、「均等・均衡待遇」原則の適用、正社員転換のための措置義務の導入などを検討する必要がある。
  • それらに加えて、特に、若年の契約社員について正社員登用の機会を増やすこと、家計補助型の契約社員が著しく低い処遇のもとで働いていることがないよう監督・指導すること、壮年の契約社員について契約期間の長期化や無期雇用化を促進すること、などが求められる。

政策への貢献

2010年9月に「有期労働契約研究会報告書」が出され、同10月より労働政策審議会労働条件分科会において有期労働契約についての議論が進められているなかで、本研究は、そのいくつかの論点に関して、議論の前提となりうる実証的データを提供したといえる。

本文

研究期間

平成22年度

執筆担当者

高橋康二
労働政策研究・研修機構研究員

入手方法等

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