労働政策研究報告書No.118
中小サービス業における人材育成・能力開発

平成22年3月30日

概要

研究の目的と方法

中小企業では、様々な環境変化に適応し経営の維持発展を図っていく上で、経営者も含めた就業者個々人のスキル・ノウハウのあり様がより大きな比重を占めている。しかしながら、実際には時間的・資源的制約や、ノウハウの不足などから中小企業における人材育成・能力開発は不十分なものになりがちで、中小企業の現状や今後の活動の方向性に即した政策的支援の必要性が高い。

本報告書では、中小企業分野のうちサービス業に該当する8業種(建物サービス業・学習塾業・美容業・情報サービス業・葬祭業・自動車整備業・老人福祉サービス業・土木建築サービス業)の企業とそこに勤務する従業員を対象に2009年に実施した、人材育成・能力開発に関するアンケート調査を様々な観点から分析し、中小サービス業における人材育成・能力開発に対する政策的支援の方向性について検討を試みた。

主な事実発見

中小サービス業の企業およびそこに勤務する従業員の間では、効果的な人材育成/キャリア形成のあり方として、一社での長期勤続による育成・能力開発(「内部労働市場型」)を志向する意見に加えて、勤務先は変えながらも同じ仕事を継続することでの育成・能力開発(「職能別労働市場型」)を志向する意見(回答した企業の29.3%、従業員の40.6%)も少なくない。

「一定の職位に到達するまでに取得させる」あるいは「自己啓発のために取得を奨励する」といったように、職業資格の取得を社内におけるキャリア形成や能力開発のなかに位置づけている企業は、従業員に対する教育訓練の取り組みをより積極的に行う傾向がある(図表1参照)

従業員に求められる仕事上の能力を明確にしている企業ほど、将来従業員に求められる能力まで考慮した長期的視野での人材育成を行う傾向が強く、社外で行われるOff-JT、自己啓発への支援もより積極的に行っている。

サービス業の企業は製造業の企業に比べると、社外でのOff-JTを実施する際に商工会議所・商工組合や業界団体といった「協同セクター」を活用する傾向が強い(図表2参照)。

政策的含意

企業横断的キャリアを通じた人材育成・能力開発を志向する企業・従業員に対応するため、職業資格をはじめとして、企業を越えて活用される社会的な職業能力の評価基準を確立していくことが求められる。

企業内における職業資格の活用は、従業員に求められる能力の明確化や、積極的な教育訓練の取り組みにつながっており、企業を越えて活用される社会的な職業能力の評価基準の確立は、企業内での育成・能力開発の促進という観点からも重要である。

育成・能力開発において活用される傾向が他業種よりも強い協同セクターの教育訓練機能を拡充していく取り組みが必要である。

図表1 企業における資格の活用と従業員を対象とした教育訓練の取り組み

図表1 企業における資格の活用と従業員を対象とした教育訓練の取り組み/労働働政策研究報告書 No.118

図表2 Off-JTにおける社外機関の活用状況

図表2 Off-JTにおける社外機関の活用状況/労働働政策研究報告書 No.118

民間セクター:民間教育訓練機関、親会社・グループ会社など

協同セクター:地域の経営者団体、業界団体、能力開発協会など

公共セクター:公共職業訓練機関

学校セクター:専修学校、各種学校、大学、高専など

本文

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研究期間

平成21年度

執筆担当者

藤本 真
労働政策研究・研修機構 人材育成部門研究員
佐藤 厚
法政大学キャリアデザイン学部教授
 
労働政策研究・研修機構特別研究員
立道信吾
日本大学文理学部教授
大木栄一
雇用能力開発機構 職業能力開発総合大学校 准教授
藤波美帆
高齢・障害者雇用支援機構 常勤嘱託
小杉礼子
労働政策研究・研修機構 人材育成部門 統括研究員
高見具広
東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程
 
労働政策研究・研修機構臨時研究協力員
金井 郁
埼玉大学経済学部専任講師

入手方法等

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成果普及課 03(5903)6263 

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