労働政策研究報告書No.110
非正社員の企業内訓練についての分析
『平成18年度能力開発基本調査』の特別集計から

平成 21 年 6月 12日

概要

アルバイト、パート、契約社員といった非正社員は正社員と比べて職業能力を身に付ける機会が少なく、現状のままでは職業能力の開発と蓄積が進まず、本人のキャリア形成に支障が生じるだけでなく、将来の所得獲得能力の格差につながると考えられます。非正社員の円滑な能力開発を行うには、非正社員らを長期育成のキャリアパスにのせるような雇用管理のあり方を問い直すことが必要です。

このような問題意識のもと、まずは非正社員の能力開発の実態を明らかにするために、本報告書では「平成18年度能力開発基本調査」の個票データの特別集計を行い、非正社員の企業内訓練の受講機会について分析しました。

この特別集計の結果、下記のような政策的インプリケーションが明らかになりました。

(1) 非正社員の入れ替わりの多い職場ほど非正社員に対する「Off-JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)」をより多く提供している。

この傾向は正社員には見られないもので、非正社員の訓練にはより大きな外部性が伴う可能性が示唆されます。このことから、訓練人材やノウハウの情報を業界単位で蓄積・流通させることは有効な手立てとなるでしょう。

(2) 全体でみると正社員と非正社員の間にOff-JT受講機会の格差が観察されるものの、人的資源管理制度が充実している職場では、正社員と非正社員のOff-JT受講格差は小さくなる。

非正社員に対する人的資源管理制度の導入状況を求人情報として提供することは職業能力を身につけることを望む非正社員にとって有益といえるでしょう。

(3) 勤務先が職業能力評価の結果を処遇に反映させている場合には、非正社員がOff-JTを受講する確率が高まる。

 

評価に関する制度の導入が情報の非対称性を緩和し、企業の非正社員へのOff-JT費用を下げることが示唆されることから、職業能力評価制度の導入支援や社会的整備も、非正社員の能力開発促進にあたって有益でしょう。

本文

研究期間

平成19~22 年度

執筆担当者

原 ひろみ
労働政策研究・研修機構 研究員
黒澤 昌子
政策研究大学院大学 教授
山本 雄三
労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員

入手方法等

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