(100)有期契約の更新拒絶(雇止め)

個別労働関係紛争判例集 13.非正規雇用

※個別労働関係紛争判例集は個別事例について法的なアドバイスをするものではありません。
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1 ポイント

(1)期間の定めのある労働契約(有期契約・期間雇用)が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、解雇権濫用法理が類推され、雇止めには合理的な理由が必要となる。

(2)期間の定めのない契約と実質的に異ならないとまでは言えない場合でも、雇用関係継続への合理的な期待が認められるときには、解雇権濫用法理が類推される。

(3)解雇権濫用法理が類推され雇止めが無効とされた場合には、従前の労働契約が更新される。

(4)雇止めの効力を判断すべき基準については、正社員とは合理的な差異が認められ、人員整理において正社員に先立ち雇止めすることも許される。

2 モデル裁判例

日立メディコ事件 最一小判昭61.12.4 労判486-6

(1)事件のあらまし

Y社では、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で臨時社員制度を設けており、その採用にあたっては、試験は実施せず、健康状態や経歴等を尋ねるのみの簡単な面接を行って採用を決定していた。労働者Xは、Y社の臨時社員として採用され、契約期間2ヵ月とする労働契約を5回更新された後、契約の更新を拒否(雇止め)されたため、XとY社との間の労働契約は期間の定めのないものであったことを前提に、契約の更新拒否は解雇にほかならず、本件解雇は権利濫用であると主張し、労働契約上の地位確認等を求め提訴した。

第1審はXの請求を認容したが、原審(第2審)はXへの雇止めを適法なものと判断したため、Xが上告した。

(2)判決の内容

労働者側敗訴

XとY社との間で締結された労働契約が5回にわたる契約の更新によって、期間の定めのない契約に転化したり、あるいは、XとY社との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない。

Y社の臨時社員は、季節的労務などのような臨時的作業のために雇用されるものではないため、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、Xとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇無効とされるような事実関係の下に雇止めをするならば、期間満了後における法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となる。

しかし、臨時社員の雇用関係は比較的軽易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している正社員を解雇する場合とは自ずから合理的な差異がある。

独立採算制が採られているY社K工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他に配転する余地もなく、臨時社員全員の雇止めが必要である場合には、正社員について希望退職者の募集等の手段を講じずに、まず臨時社員の雇止めをしてもやむを得ないというべきである。

以上のことから、Xに対する雇止めについては、これを権利の濫用、信義則違反とすることはできない。

3 解説

(1)期間雇用(有期雇用)に関する民法上の原則

期間の定めのある雇用契約は、その契約期間が満了すれば当然に終了するのが原則である。したがって、契約の更新は新たな契約の締結であり、これを行うか否かは当事者の自由に委ねられている。ただし、契約期間が満了した後も労働者が引き続き労働に従事し、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前と同じ条件で雇用(更新)されたものと推定される(民629条1項)。したがって、期間経過後も労働関係が事実上継続されている場合には、当該雇用契約につき黙示の更新がなされたことになる。

なお、期間途中での解雇については、「やむをえない事由」がある場合でなければできない(民628条、労契17条)。

(2)雇止めと解雇権濫用法理

裁判所は、反復更新されて長期雇用化した期間雇用労働者の契約更新拒否(雇止め)について、解雇権濫用法理を類推するとの見解を示し、雇止めに関しても客観的合理的理由を要求している。

東芝柳町工場事件(最一小判昭49.7.22 民集28-5-927)は、5回から23回にわたって契約を更新していた労働者に対する雇止めについて、契約を反復更新することで期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示にほかならず、解雇に関する法理を類推すべきであると判断した。その上で、余剰人員の発生等、従来の契約を反復更新するという取扱いを変更してもやむを得ないと認められる特段の事情がなければ雇止めできないとした。

その後、モデル裁判例において裁判所は、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態とまではいえなくとも、合理的な期待が認められる場合にも解雇法理を類推適用することを明らかにした。さらに、龍神タクシー事件(大阪高判平3.1.16労判581-36)は、1年間の期間の定めのある臨時社員として雇用契約を締結した労働者に対する1回目の更新拒否に関して、それまで臨時社員に対する契約は例外なく更新されてきたこと、正社員に欠員が生じたときは臨時社員の中から希望する者を登用してきたこと等の事情から、実質的に期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、雇用継続に対する合理的な期待が是認できるとして、更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情がなければ雇止めできないと判断した。

他方で、丸島アクアシステム事件(大阪高決平9.12.16 労判729-18)は、6ヵ月の雇用契約を10回にわたって反復更新した労働者に対する雇止めに関して、採用に当たって使用者は長期雇用を期待させるような言動をしていないこと、実質的な審査によって契約更新を行っていたこと等の事情から、期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性があったということはできないと判断し、解雇法理の類推適用を否定し、期間満了による契約終了を肯定した。同様に、雇用継続に対する合理的な期待を認めることはできないとして雇止めを有効とした裁判例として、ロイター・ジャパン事件(東京地判平11.1.29 労判760-54)や旭川大学事件(札幌高判平13.1.31 労判801-13)等がある。

なお、有期契約を反復更新してきた労働者に対し、次回の契約更新はしないことを明示した後に雇止めした場合の有効性が争われた裁判例では、雇用の継続を期待できる合理性は認められず、解雇法理の類推適用を否定し、期間満了によって契約は終了したと判断されている(近畿コカ・コーラボトリング事件 大阪地判平17.1.13 労判893-150、雪印ビジネスサービス事件 浦和地川越支判平12.9.27 労判802-63)。

(3)雇止めに対する解雇法理の類推適用と整理解雇

有期雇用契約が反復継続し、期間の定めのない契約と異ならない状態となるか、あるいは雇用継続に対する合理的な期待が認められる場合には、解雇法理が類推適用されるが、その場合に要求される「客観的で合理的な理由」とは、正社員と同じものであるのかが問題となる。このことは、正社員の人員削減に先立って、期間雇用社員の雇止めをしてもよいかとして争われてきている。

この点について、裁判所は、モデル裁判例をはじめとして、人員整理に際して、反復継続して長期雇用化している労働者であっても、期間の定めのない契約を締結している正社員より前に彼らを雇止めすることを認めている。