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ページ構成について
目次
序文
1.労働関係法規の適用
2.雇用関係の開始
3.公民権・労働憲章
4.労働条件
5.人事制度
6.安全衛生・労災
7.就業規則
8.労働条件の変更
9.企業の再編・組織変更時の雇用保障
10.雇用関係の終了及び終了後
11.雇用平等
12.職場における人権
13.非正規雇用
14.外国人労働者

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Home > データベース(労働政策研究支援情報) > 個別労働関係紛争判例集 > 4.労働条件 > (16)【賃金】年俸制

データベース(労働政策研究支援情報)

(16)【賃金】年俸制

1 ポイント

(1)年俸額の労使合意が達成されない場合に、使用者が一方的に年俸額を決定するためには、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化され、就業規則等に明示されていなければならない。

(2)年俸制において年俸の合意が調わないときは、使用者の評価に基づき賃金額が決定されることもあるが、そうした評価に関する使用者の裁量権も合理的範囲内に限定され、その逸脱は許されない。

(3)年俸制を採用している場合、契約期間途中での減額は原則として認められない。また、使用者は、時間外労働を命じたときには、時間外割増賃金の支払いをしなければならない。

2 モデル裁判例

日本システム開発研究所事件 東京高判平20.4.9 労判959-6

(1)事件のあらまし

被告Yでは、20年以上前から就業規則を変更することなく、主に40歳以上の研究職員を対象として、年俸制度を導入していた。Yと労働者との年俸交渉は毎年6月に行われ、その年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)の年俸を決めることとし、その際、5月中旬頃まで個人業績評価を行い、非年俸者の給与改定基準表を参考に、Yの役員が交渉開始の目安となる提示額を計算し、1人当たり30分から1時間ほどの交渉が行われ、役員と労働者が協議して最終的な合意額と支払方法を決定していた。ところが、平成15年・16年において、業績評価の基となる資料の提出を研究室長らが拒んだことから、業績評価ができず、平成14年度の給与のままとされた。その後、Yの経営が悪化したことなどから、給与の見直しを行い、平成17年度には、Yの役員が作成した評価に基づく業績評価を行い、個別の交渉を行ったが、年俸額が大幅に引き下げられていたことから、合意に至らなかった。Yは、今後の交渉による確定・清算を予定しつつも、暫定的に算定した額に基づき賃金を支払った。そこで、年俸制の適用を受けていた4名の原告Xらが、従前の賃金との差額等を求めて提訴し、一審(東京地判平18.10.6 労判934-69)がXらの請求を認容したため、Yが控訴したのが本件である。

(2)判決の内容

労働者側勝訴

Yにおける年俸制のように、期間の定めのない雇用契約における年俸制において、使用者と労働者との間で、新年度の賃金額についての合意が成立しない場合は、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるというべきである。上記要件が満たされていない場合には、労基法15条、89条の趣旨に照らし、特段の事情が認められない限り、使用者に一方的な評価決定権はないと解するのが相当である。そして、Yでは、年俸制に関する明文の規定を欠き、年俸額算定方法、減額の限界の有無等が確立し、明示されていたと認めることはできない。そうすると、本件においては、使用者と労働者との間で合意が成立しなかった場合、使用者に一方的な年俸決定権はなく、前年度の年俸額をもって次年度の年俸額とせざるを得ない。

3 解説
(1)年俸額の合意の未成立と年俸額の確定

年俸制とは、年単位で賃金額を決定するものであり、一般に、その額を成果・業績を主たる基準に決定するという特徴を持っている。そして、具体的な賃金額の決定・算定は、通常、査定(人事考課)を通じて行われ、成果・業績の評価に依存することになり、その評価をめぐってトラブルが生じやすい。

モデル裁判例によれば、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるとされ、このような就業規則の整備を怠って、上記要件を満たさない場合、使用者による一方的決定は許されず、合意が成立しないときには、従前の年俸額に据え置かれることになる。

判例は、賃金の減額変更について、基本的に制約的な判断の傾向を示しており((15)【賃金】参照)、モデル裁判例もそうした判例の流れの中で位置付けることができる。

他方で、最終的に、使用者の決定に委ねられるとする裁判例もある。例えば、年俸制導入の経緯から、労働者の同意なく、使用者が年俸額を決定できる年俸制が合意されている場合には、減額されたときでも、労働者は、減額された年俸額に基づく賃金を受領するほかない(中山書店事件 東京地判平19.3.26 労判943-41)。その上で、年俸額決定の根拠となった査定(成果・業績の評価等)について、使用者の裁量権逸脱の有無について争うことになる。こうしたトラブルを防止するため、労使間において、成果・業績の判断基準や目標を明確に合意し、使用者は公正に査定を行うべきことが強く要請され、不服申立制度の整備を図ることが望ましい。

(2)年俸制の導入

年功的な賃金制度にかえて、賃金の増減を伴う年俸制を導入する場合、就業規則の不利益変更の問題として、その変更の合理性が、しばしば裁判例で争われる。賃金制度の変更には、高度の必要性が求められることになるが(大曲市農協事件 最三小判昭63.2.16 民集42-2-60)、経営危機が深刻でない場合でも、企業の競争環境や賃金制度の潮流などから、その必要性を肯定する裁判例も少なくない(ハクスイテック事件 大阪高判平13.8.30 労判816-23、ノイズ研究所事件 東京高判平18.6.22 労判920-5)。もちろん、その場合でも、変更後の賃金制度自体が合理的な内容で設計され、適切に運用されていることが、合理性を肯定する重要な事実となり、適正な評価システムを明確に定めておく必要がある(労契法10条)。

(3)年俸制に対する法規制

年俸制の場合でも、労基法24条2項の毎月1回以上定期払い原則が適用されるため、年俸を少なくとも12回に分割して支払わなければならない。また、同法27条(出来高払制の保障給)との関係で、最低保障給を設けておくことが望ましい。

そして、年俸制の場合でも、労基法上の労働時間等の規制を受けるため、管理監督者等(41条)や裁量労働制の適用者(38条の3、38条の4)でない限り、労働時間管理を行い、時間外・休日労働に対する割増賃金の支払いが必要となる((25)【労働時間】参照)。例えば、時間外労働手当を含めて月額賃金を決定し、就業規則上「時間外労働手当は支給しない」と定めていた場合でも、労基法37条の趣旨から、時間外労働を命じている以上、使用者は割増賃金を支払わなければならない(システムワークス事件 大阪地判平14.10.25 労判844-79)。さらに、この事件では、割増賃金の算定基礎について、月額18万円で年間15ヵ月分を支給(7月と12月に各27万円(18万円×1.5)の賞与を支給)するとされていたが、裁判所は、その賞与分について、支給時期および支給額があらかじめ確定しているので、「臨時に支払われた賃金」または「1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金」(労基法施行規則21条)には該当しないとして、割増賃金の算定基礎となる賃金に算入されると判断した。

また、割増賃金分を固定的手当で支払う合意があっても、実際の労働に応じた割増賃金が、その固定的手当の額を上回る場合には、使用者はその差額を支払わなければならない。さらに、割増賃金・諸手当込みで年俸額を決定する場合、割増賃金部分と本給部分と明確に区別できるように定める必要がある(創栄コンサルタント事件 大阪地判平14.5.17 労判828-14)。

(4)年俸額の期間途中の変更

いったん、年俸総額や月額支給額の合意が成立した場合においては、就業規則の変更によっても、契約期間途中での賃金額の変更は認められない(シーエーアイ事件 東京地判平12.2.8 労判787-58)。そして、契約期間途中における年俸額の引下げの合意についても、賃金債権の放棄と同様に、労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認められる合理的理由の存在が必要とされ(北海道国際航空事件 最一小判平15.12.18 労判866-15)、減額変更は制限されている。

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