欧米諸国のLGBTの就労をめぐる状況:フランス
LGBTに関する法整備状況と政府・企業の対応

英語圏と同様に、フランスでも性的マイノリティは 「lesbiennes, gays, trans et bisexuels」の頭文字をとってLGBTと呼ばれる。

法的整備状況

フランスでは、2012年5月に同性愛者の結婚及び養子縁組の合法化を公約に掲げるオランド大統領が当選し、同年11月、全ての人々に結婚と養子縁組(養子を取ること)を認める法案が閣議決定された。国民の間で賛否が分かれる中、2013年春に国会での審議が終了し、同性同士の結婚が可能となる法律「同姓カップルに結婚を認める2013年5月17日の法」(Loi n° 2013-404 du 17 mai 2013 ouvrant le mariage aux couples de personnes de même sexe)が成立した。

これに先立つ1999年秋に、「市民連帯協定に関する1999年11月15日の法」(Loi n°99-944 du 15 novembre 1999 relative au pacte civil de solidarité) という法律が制定されている。共同生活を営む非婚姻成人カップルに対して、税控除や遺産相続、年金・保険給付、外国人の場合はパートナーの滞在許可など、結婚している夫婦に付与される権利の一部を認めるパックス(Pacs:Pacte civil de solidalité:連帯市民契約)制度を制定した法律である。パックスは契約であるため、法的に様々な契約を締結できる者に限られているが、この法律は同性カップルでも利用可能な制度である。

差別の禁止対象としてのLGBT

差別を撤廃するための施策は法務省によって行われている。同省はstop-discrimination.gouv.frというインターネットサイトを開設し、様々な差別と同様に、性的指向を理由とした差別が刑罰の対象となっていることを国民に周知するとともに、差別を撲滅する努力を行っている。差別の定義や様々な差別、罰則などを解説し、差別を受けた場合の相談先などを示している。刑法典225-1条は「差別」として、年齢や人種などに加えて、性的指向(orientation sexuelle)などを挙げている。特に就職や住居(不動産の売買や賃貸の契約時)、教育、様々なサービスの提供時における、様々な理由による差別を禁止している。このサイトでは、差別を受けた者が大審裁判所の被害者支援事務所や無料匿名電話相談などを利用できることを紹介し、その連絡先等を周知している。

企業事例(積極的受け入れ事例)

フランスの個人経営の商店やレストランなどには、Gay Friendlyを掲げているところがある。例えば、レストラン予約サイトの「lafourchette.com」では、400 軒以上のレストランがGay Friendlyとしている(注1)

大企業のうち、例えばAccorホテルは多様性憲章(Charte de la diversité)を採択している。その中では、従業員の採用や労働条件などで、性別、年齢、身体的特徴、宗教、性的指向を含む様々な差別を禁じている。また、取引先にもその姿勢を求める旨、明記されている。同社のインターネットサイトは、パリで行われるゲイパレードの概要を掲載している(注2)

企業事例(差別を訴えられた事例)

逆にLGBT関連の問題が指摘される企業もある。差別問題を扱う差別禁止・平等推進高等機関(HALDE)に訴えられた企業事例として、銀行業クレディ・アグリコール・シャラント・マリティーム・ドゥ・セーヴル(Crédit Agricole Charente-Maritime Deux-Sèvres)がある(注3)。同社は、2008年、社員から市民連帯協定に関する1999年11月15日の法に基づくパックスに関する訴えを受けた。HALDEは審議の結果、結婚すれば享受できる特別休暇や給付金を、パックスを締結した者にも与えるよう勧告した。

(ウェブサイト最終閲覧日:2017年4月3日)

2017年4月 フォーカス: 欧米諸国のLGBTの就労をめぐる状況

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