パートタイム労働者:イギリス
柔軟な働き方を実現する労働形態として男性にも浸透中

パートタイム労働者の概況 ―男性パートタイム労働者が増加

英国のパートタイム労働(注1)は、既婚女性が子育ての期間に労働時間を短縮するために選ぶ就業形態として第二次大戦以降広く普及した。OECDの“Employment Outlook 2005”によれば、就業者に占めるパートタイム労働者の割合は、EU内ではオランダに次いで高い25.4%で就労者の4人に1人がパートタイム労働者として働いている。

最新の統計(英国統計局「Labour Market Statistics」)によれば、2006年1~3月期のパートタイム労働者数は、733万9000人、うち77.4%(568万5000千人)を女性が占める。出産後パートタイムではなく、フルタイムに復帰する女性が増えていることから、女性就業者全体に占めるパート労働者の割合は1995年の81.6%から、77.5%(2005年)にまで低下し、パートタイム比率の低下と労働力率(1995年/66.6%、2005年/70.0%)の上昇が同時進行している。

一方、男性のパートタイム労働者が増加していることが最近の特徴で、男性就業者全体に占めるパートの割合は1995年の7.9%から2005年には10.6%にまで増加した。この背景には(1)2000年6月にEU指令を国内法化した「パートタイム労働者規則」(注2)が施行され、パートに対する均等な取り扱いの法整備が進んだこと、(2)労働者の間で仕事と家庭や個人の生活を調和させ、より柔軟に働きたいという志向が高まっていること(3)この志向を支援する様々な施策(いわゆるワーク・ライフ・バランス関連施策)を政府が積極的に展開していることが挙げられる。

とりわけ、2002年に成立した雇用法において6歳未満の子供を持つ親に対して、パートタイム労働をはじめとする「柔軟な働き方(フレキシブル・ワーキング)」の申請権を与えたことから、男性の育児参加に関連したパートタイム就労が今後拡大するものとみられている。

パートタイム労働者の処遇-賃金・労働時間

「パートタイム労働者規則」に基づき、パートとフル間での同一労働・同一賃金の原則が採られているが、実際の時間あたり賃金には格差がある。英国統計局「所得に関する年間調査結果」によれば2005年4月におけるパートタイム労働者の時間あたり賃金(注3)は、6.64ポンドでフルタイム(10.69ポンド)との差は4.05ポンド。2001年4月(4.00ポンド)と比較して格差が縮小しているとはいえない。一方、労働時間についてみると、わが国と異なり(注4)パートタイム労働者の労働時間は短く、週平均15.7時間(労働力調査2006年1~3月期)で、フルタイム労働者の半分以下の水準となっている。

パートタイム労働の発展型ジョブ・シェアリングについて

柔軟な働き方への関心が高い英国では、パートタイムをはじめとする様々な「時短型」の労働形態が発展しつつある。(注5その典型としてジョブ・シェアリングがある。ジョブ・シェアリングとは、1人のフルタイムの職務を特定の2人(あるいはそれ以上の)労働者が組となって週の勤務日あるいは1日のうちの午前と午後などで責任分担するパートタイム就労形態を指す。

ジョブ・シェアリングで働く労働者は、パートタイム労働者規則によって保護され、賃金は各自の実際の労働時間を基準に支払われる。雇用均等委員会(EOC)報告書「ジョブ・シェアリングと学期間労働2004」によれば、0~4歳の子を持つ女性においてジョブ・シェアリングを行う割合が最も高くなっている(4.3%)。また、英国職場雇用関係調査.(WERS2004)によれば、非管理職の従業員にジョブ・シェアリングを提供する企業の割合は前回調査(31%)と比較して10ポイント(41%)増加しており、育児期における短時間勤務として利用されている様子がうかがえる。

企業にとってジョブ・シェアリングを行なうメリット、デメリットについて考えると、職務を分担する労働者を見つけるのが困難といった運用上の困難さはあるものの、「1人分の賃金で複数の労働者のアイディアを活用することができる。生産性や創造性を高める働き方だ」として、管理職や専門職に短時間勤務が導入されているほか、現場従業員レベルにおいても職務と責任を複数の労働者で共有することによるモラール向上、欠勤率の低下、熟練工の定着などの効果があるなどのメリットが認められている。

参考

2006年6月 フォーカス:パートタイム労働者

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