労働運動の再生:ドイツ
DGBの組合員減少と組織化の課題

  • カテゴリー:労使関係
  • フォーカス:2005年9月

ドイツ最大のナショナルセンターDGB(ドイツ労働総同盟)の組合員減少が続いている。2004年末時点の組織人員は約701万3000人で、前年(2003年末)の約736万3000人から約35万人の減少。1年の間に4.8%近くの組合員が減ったことになる。DGBの組織人員は、東西ドイツ統一後の1991年に約1180万人のピークを記録。しかし現在は、その6割程度にまで落ち込んだ。

産業別組合で見ると、最大の公共サービス労組(ver.di)が約264万5000人で、対前年比マイナス5.7%と落ち込みが激しい。一方、金属産業労組(IGメタル)は約242万5000人で、対前年比ではマイナス4.0%の減少だ。三番目の規模の鉱業・化学・エネルギー労組(IG-BCE)は約80万1000人で、対前年比マイナス3.8%と落ち込みは比較的少ない。減少率では、建設・農業・環境労組(約42万5000人、DGBでIG-BCEに次ぐ規模)が対前年比7.9%と大幅に組合員を減らしている。

2004年末時点のデータを発表した直後の今年1月、M・ゾマーDGB会長は声明を出し、「トレンドの転換」を引き起こしたいと述べた。具体的には、組合員に対する情報提供および相談などのサービス強化を打ち出すとともに、1)ドイツの「社会国家」としてのあり方追求、2)欧州レベルでの労使による「社会的対話」の促進と労働協約政策の労使合意の促進、3)欧州への拡大を視野に入れた企業内共同決定システムの改革--などを重点項目としてあげている。

ゾマー会長が打ち出したDGBの「トレンドの転換」に関しては、IG-BCEのH・シュモルト委員長が、「結果を報告するにはまだ早すぎる」と述べている(ディ・ヴェルト紙、8月6日付)。同氏は組合員の構成が雇用構造を反映すべきだとし、「労働組合は今日でも70年代の組織構成のイメージをもっている」、「若年者、高資格労働者、女性の組織化を強力に推進すべきだ」と指摘した。さらに、IG-BCEでは営業職労働者の組織化に力を入れているほか、職業訓練生の7割を組織したと述べている。

DGBは明らかに、公務員、サービス業やホワイトカラーなどの分野における組織化で苦戦している。公務員を中心とするDBB(ドイツ官吏同盟)はDGBと異なり、1991年に組合員数100万人を突破して以来、2003年時点で約125万8000人まで数を増やしている。また、サービス業においては、ver.diが組織化対象労働者の2割程度しか組織化できていないとする報道も出ている。これらの層の組織化が、DGBの今後の動向をも左右しそうだ。

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