2005年版OECD雇用アウトルック:ドイツ
OECD雇用戦略とドイツ労働市場改革

経済協力開発機構(OECD)が「雇用アウトルック2005」と同時に公表したドイツに関するコメントでは、雇用・失業情勢について東西および各地域の間に大きな格差が存在することが指摘されている。雇用政策に関しては、ドイツが最優先課題として労働市場改革に取り組んでいることを紹介し、OECDの描く雇用戦略のメニューと、ドイツで取り組まれている職業紹介サービスの改善や、失業者の就労へのインセンティブを与える措置などを対比させている。

地域格差

OECDの算出した2004年のドイツの平均失業率は9.3%。このうち1年以上職を求めている長期失業者の比率は50%を超え、OECD加盟国平均32%を大きく上回っている。ドイツ国内の地域ごとの失業率格差が大きいことも特徴の一つで、オーバーバイエルン地域(南部バイエルン州のうちミュンヘンおよびその周辺地域)の約5%から、デッサウ地域(東部のザクセン・アンハルト州)の約22%まで、とくに東西の格差が広がっており、OECD加盟国の中でもいわゆる「南北問題」を抱えるイタリアに次いで地域格差が大きい。(図参照)

OECDはこの格差問題について、1)就業人口の地域移動が少なく、高失業地域から低失業地域への労働力の移動が効果的に行われていない、2)比較的中央集権化された労働協約交渉システムにより、好況の地域の高い賃金水準が全国的に波及する傾向がある――の二点を指摘している。

就労促進政策

OECDはドイツで現在実施段階に入っている労働市場改革を踏まえ、優先順位の高い政策として失業者の「労働への移行」をあげ、就労促進政策についてコメントしている。

雇用アウトルック2005で「求職者に対し集中的なカウンセリング、職探しサポートおよび一定期間の失業後の再雇用プログラムへの参加を用意することは非常に有効であることを示している」と述べていることを踏まえ、ドイツの状況について、職業紹介サービスの再編成が始まっていることを紹介。失業者への援助と、それと対をなす(失業者に対する)就労の要求を両輪とする戦略が、「いくつかの国の成功事例-デンマーク、英国、最近までのオランダなどの、失業、とくに長期失業の削減に際しての事例に拠っている」と指摘している。

就労への金銭的インセンティブ

OECDは、このような就労促進政策の中で、「職に就いた人への適切な金銭的インセンティブ」が重要だとしている。OECDの調査によれば、「職を受け入れた場合のボーナス支給や、職を受け入れた後継続的な金銭的援助を提供することが効果的な措置となる」という。ドイツでは、雇用の場を増やすために、低賃金の職場を拡大するとともに、そこでの就労を受け入れた場合社会保険料負担分などを国が援助する"コンビ賃金"の仕組みが検討されてきた。OECDはこのような補助に関して、1)支給額が少なすぎては効果が薄れてしまう、2)「最もそれを必要としている要扶助世帯」に照準を合わせて支給対象を決めなければならない、3)支給対象層の設定と、就労した場合の「最低限の労働時間」などの基準を定め、効果的な援助を行う必要がある――と指摘している。

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