2005年版OECD雇用アウトルック:フランス
失業率、長期失業者の比率ともに、OECD加盟諸国の平均を上回る
—労働市場を再編する新たな努力が必要

2004年、フランスは9.6%を超える失業率を記録した。これは、OECD加盟諸国の平均(6.9%)よりも高い。また、求職者のうち40%以上が、1年以上の失業者である(OECD加盟諸国の平均は、32%)。こうした状況に対して、OECD『雇用アウトルック 2005』は、「フランスは、労働市場を再編する新たな努力を講じる必要がある」と指摘。同時に、「就労化(activation)」政策と「就労への金銭的インセンティブ」の重要性、「雇用保護法制」の見直しのあり方について言及している。OECDが発表した内容の概略は、以下の通り。

「就労化(activation)」政策

求職者に対して何よりも重要なことは、1)徹底的なカウンセリングや求職に関する支援サービスを提供すること、2)一定の失業期間後に再就職を目指すプログラムに参加できるよう保障すること――の2点。また、こうした「就労化」政策は、失業や退職に対する手当の支給と対照的に捉える必要がある。つまり、支給される給付金の額が高くなれば高くなるほど、また、給付期間が長くなれば長くなるほど、「就労化」政策の重要性は増すといえる。

この点を考慮した戦略により、デンマークやイギリス、そして最近までのオランダが、失業――特に、長期の失業の削減に成功している。さらに、このような効果的な「就労化」プログラムが存在しない場合、長期失業者に対する手当の給付システムを維持することが著しく困難になる。そして、それは長期的にみると、莫大な費用がかかると考えられる。

就労への金銭的インセンティブ

求職者にとって、「再び職に就くことに金銭的なインセンティブが十分にある」ということも、極めて重要なポイントとなる。手厚い社会保障の給付は、金銭的な面で、再雇用への意思を阻害する傾向があることは否めない。しかし、だからといって、単に給付総額を縮減するというのは、得策とはいえない。むしろ、税金や社会保障給付システム全体の改革こそが重要である。

特に、「雇用復帰手当」や「職に就くことを条件とした手当」の支給は、効果的である。ただし、こうした手当も小額であっては、求職者の行動を左右するほどの影響力はない。就労のインセンティブを高めるためには、1)予算の範囲内で、十分な額を給付すること、2)労働時間を基準とした受給資格条件を付加するなどして、適用対象を適切に設定すること、3)最も不安定な状況にあり、本当に援助を必要とする家族も対象とすること――に考慮した援助のあり方が重要である。

「雇用保護法制」の見直し

フランスでは、職に就いていない人々を広く動員するための政策は、十分とはいえない状況にある。こうした状況を改善するには、「雇用保護法制(la protection de l´emploi:LPE)」を見直す必要がある。これは、『雇用アウトルック2004』でも既に指摘している。特に、期限の定めのない雇用契約に適用される解雇手続きは、複雑すぎる。そして、その複雑さにより、使用者は期限の定めの無い雇用を躊躇するという事態が生じている。

ここで、参考になるのは、デンマークの「フレキシキュリティ」()モデル。同モデルは、採用及び解雇の決定に関して、使用者に大きな駆け引きの余白部分を残しつつ、寛大な失業給付と有効な雇用復帰援助サービスを提供している。これは、LPEの見直しが必要なフランスにとって、非常に興味深い選択肢の一つといえる。

2005年8月 フォーカス: 2005年版OECD雇用アウトルック

関連情報