2005年版OECD雇用アウトルック:イギリス
OECD、英国の長期失業者対策プログラムを評価

OECDは『雇用アウトルック2005』において、「失業者への支援は、可能な限り失業者に合わせた雇用サービスを実施する」ことが必要だと提言している。第5章では、公共職業サービスとその評価について分析。失業者を雇用に結びつける職業紹介、失業保険、積極的労働市場政策といった公共職業サービスプログラムは、OECDの雇用戦略の中核と位置付けている。英国の公共職業サービスについては、長期失業者対策向けプログラム「エンプロイメントゾーン」を紹介している。

公共職業サービスの区分

OECDは公共職業サービスの実施主体別に、(1)中央政府によって一元的に管理されるものと(2)国等の設置した施設を民間業者等が包括的に管理・運営するもの(公設民営)、の二つに区分している。さらに、公設民営のメリットとして、(1)より地域特性に対応したサービスが提供できること、(2)競争によって最も適したものが生き残る「適者生存(survival of the fittest )」の原理が働くことを挙げており、これを具現している例として英国の長期失業者向け就業支援プログラムである「エンプロイメントゾーン」について触れている。

エンプロイメントゾーンとは?

英国では、1988年から効率化の推進と行政サービスの向上を図るために、中央省庁の事業実施部門を政策立案部門から切り離すエージェンシー化(独立機関化)を行ってきた。これに伴い、公共職業安定機関を運営する雇用サービス庁(Employment Service)も1990年にエージェンシー化された(注1)。

2000年、雇用サービス庁はイングランド、スコットランド、ウェールズなど高失業15地域を特定し、そこでの長期失業者を就職させるプログラム「エンプロイメントゾーン」を開始した。このプログラムの特色は、通常公共職業安定機関である「ジョブセンタープラス」が行っている職業紹介業務を民間委託に切り替えることにある。エンプロイメントゾーンは、当初2002年3月までの時限的施行とされていたが、その結果が良好であったため、期間を延長し実施されている。雇用年金省の統計によれば、2005年5月現在で、のべ13万6000人がプログラムに参加し、うち5万1000人が職を得たとしている(注2)。

OECD、エンプロイメントゾーンに一定の評価

OECDは公共職業サービスを外部化するにあたっては、実施主体が恣意的に求職者を選択してはならないとしている。委託された機関が、ジョブとのマッチング率を高めるため、就職に有利な求職者のみを選ばないようにとの理由だ。 また、英国のエンプロイメントゾーンについては、求職者が就職した時点と、その後3カ月以上就労が継続した時点で報酬を支払うという段階的な報酬システムが、プログラムの運営に良い影響を与えているとする研究結果を引用、一定の効果を挙げていると評価している。

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