EU憲法批准否決の波紋:ドイツ(2)
今こそ社会的欧州のためにイニシアティブを!

ドイツ労働組合総同盟は欧州憲法条約がこれまでの欧州の法的枠組みを一歩前進させるものだったので、これを大いに歓迎した。このような背景から、わたしはフランスの有権者の過半数がEU憲法にノーを突きつけたことを非常に残念に思う。しかし、この投票結果は欧州連合のすべての機関が真摯に受け止めなければならない域内のムードを反映してもいる。

とくに、人間より市場を大事にする『国民から遠い欧州』に対する懸念がフランスでも顕著になっていることを認識しなければならない。

もっとも、自分の職場や個人の社会保障への心配から、欧州政治における社会的均衡の欠如についてフラストレーションが高まっているのはフランスだけのことではない。

欧州の政府や機関にはこの社会的均衡を確保する責務がある。

ドイツ労働組合総同盟(DGB)ゾンマー会長声明より抜粋

成長と雇用のための政治

欧州には成長と雇用のための積極的な政策が必要だ。競争力とは、賃金・社会保障・税制への大きな圧力となる、容赦のない立地競争であってはならない。欧州は質的成長を目指さなければならない。質的成長とは経済・環境・社会面での成長をいう。よりよい雇用が増えるということだ。

欧州の税制平準化

多くのEU加盟国は非常に意識的、ないし慎重な姿勢で、企業や資産に対してより低い税率を競い合ってきた。その結果、財政は破綻し、労働者は増大する税・保険料負担、さらに立地移転やそれに伴う雇用の喪失に苦しめられている。欧州で最も低い税をめぐるこの競争には終止符を打たなければならない。欧州連合は税率と算定基礎、そしてとりわけ企業・資本収益税について共通の税率、少なくとも回廊(コリドール)に合意する必要がある。

労働者の権利

労働者の権利は欧州の社会モデルの中核部分であり、強化が必要だ。国境を越える営みが増える経済においてこれは、労働者が国境を越える企業に関わることが多くなるということを意味する。だから、欧州経営協議会の権利を拡充する必要がある。つまり、よりよい労働条件、よりよい情報、より強い共同決定権を得る必要がある。企業が欧州にある様々な立地で活動する場合、1000人未満の従業員を抱える企業でも欧州経営協議会が必要だ。

企業における共同決定は経済的・社会的に成功したモデルだ。それは欧州で欧州経営協議会と同様の成功を収めるだろう。労働者の共同決定はEUのどんな会社法にも代わるものではなく、少なくとも欧州株式会社に関する妥協を基礎にしてとり決める必要がある。

EU域内市場におけるサービス

EUでのサービスの域内市場の自由化に関する目下の論争は、労働組合にとっては、欧州連合で社会的市場経済の原理がどれくらい実践されているのかを計る目安になる。3月19日にブリュッセルで労働組合が欧州委員会の基準案にノーを突きつけた後、サービスを自由化するには賃金・社会ダンピングを妨げなければならないなど、正しい方向に再考を始めた政府もある。

社会的最低基準

社会的欧州には(義務的な)欧州最低基準が必要だ。そしてこれは強化されたものでなければならない。例えば労働時間に関して、欧州全体に例外なく適用される上限を設ける必要がある。労働時間から待機時間を引いて計算するのは、いわゆる『個人に対するオプト・アウト(適用除外協定)』と同様、受け入れられない。

欧州統合プロジェクトは岐路に立っている。それは、政治家が近代的な欧州社会国家の基礎を築くことに成功するのか、あるいは欧州連合が単なる自由貿易圏に敗退してしまうかの岐路だ。最初のオプションだけが欧州の人々を融合する。そして、社会的欧州だけに政治的未来がある。

2005年7月 フォーカス: EU憲法批准否決の波紋

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