勤労者意識:ドイツ
雇用情勢に高い関心 ―ドイツの意識調査

今年に入り失業者が500万人の壁を突破し、政策課題として最優先の解決が求められているドイツの雇用情勢。しかし、国民は雇用不安を感じながらも、連邦政府や政党の示す政策には懐疑的で、現在行われている労働市場改革についても見方は一様ではない――ドイツにおける最新の世論調査からは、ネガティブともいえる意識が浮かび上がってくる。調査対象の8割以上が、失業問題の解決が長引くと予測する結果が出るなど、現在の政策が信頼を得ているとはいえない状況だ。

ZDF調査

ZDF(ドイツ第2テレビ)は毎月中旬、主に政党支持を中心テーマとして定期的に電話調査を実施している。3月18日に発表された最新調査では、特別テーマとして、労働市場改革メニューを含む失業への対応策に焦点を当てている。

最近の同調査によれば、政権与党であるSPD(社会民主党)への支持が低迷しており、3月調査では前月よりさらに3ポイント減少し29%となった。野党CDU/CSU(キリスト教社会/民主同盟)は45%で1ポイントの上昇。SPDと連立している緑の党が12%、CDU/CSUと連携するFDP(自由民主党)は6%である。このようにSPDの支持率が低い主な要因として、悪化する雇用情勢があげられる。

雇用の見通しについて、回答者の85%は、「労働市場における失業問題が来年には解決する」という見方に懐疑的で、楽観的な回答は13%に過ぎない。シュレーダー政権が新たに打ち出した、雇用改善を目的とする景気対策としての「法人税減税」については、失業の減少に大きく貢献すると答えたのは16%に過ぎず、「少し効果がある」が51%、「効果は全くない」が28%と、悲観的な回答が多い。経営者や野党が主張している解雇制限の緩和(現在小規模企業にのみ、新規採用を容易にする目的で、解雇保護法が規定する条件の適用除外が認められている)に関しても、労働市場に対する影響について「限定的に改善される」が36%、「全く作用しない」が47%で、その効果は疑問視されている。

このように悲観的な見方が多数を占める一方で、連邦政府の失業克服のための対応を「十分ではない」とする回答は76%に達し、十分であるとの回答16%を大きく上回っている。しかし、CDU/CSUを中心とする政権になったとしても、十分な対応が取られると見るのは25%に過ぎない。65%は「何も変わらない」とし、むしろ「悪くなる」との回答も5%存在する。これに対し、SPDとCDU/CSUが連立政権を組んだ場合(大連立)、43%は労働市場によい影響があるとし、「変化なし」が44%、「悪い結果になる」が8%と、他の組み合わせよりはポジティブな結果となっている。

「雇用第一」の考え方が主流に

雇用問題への関心は、労働市場改革の中心施策であるハルツ第IV法(「失業扶助」と「社会扶助」を統合して新たに「失業給付II」を創設)の今年1月施行を前に、一段と高まっていた。04年10月のZDF調査では、高失業の原因として、「経済状況」が39%、「連邦政府に責任がある」が28%、「企業に責任がある」が25%という結果が出ている。また、雇用確保のためには労働時間延長(賃金調整なし)を止むを得ないとする意見が77%あり、これに反対する回答は19%のみだった。働く側が問題を当事者として深刻に受け止めていることがわかる。

3月7日にディ・ヴェルト紙が発表した、連邦政府が民間調査機関に委託したアンケート調査でも、「今後6カ月の間に職場を失う懸念がある」とする人が、西独地域で23%、東独地域で24%を占めた。この調査では、労働市場の改善を目的とする「ハルツ改革」を支持する人が51%、不支持が41%となっている。また、「失業扶助」と「社会扶助」の統合には49%が賛成しているが、反対も42%にのぼっている。

このように、国民の多くは、雇用に大きな関心を示し、改革の必要性を認識しながらも、具体策の面では必ずしもコンセンサスが形成されておらず、政府・政党への信頼も高いとはいえない。しばらくは、景気動向と雇用情勢に一喜一憂する状況が続きそうだ。

2005年4月 フォーカス: 勤労者意識

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