地域雇用政策:フランス
フランスの地域雇用開発

  • カテゴリー:地域雇用
  • フォーカス:2005年3月

「中央集権国家の代表格」とまで言われてきたフランスにおいては、雇用もまた「国家的な問題」とされ、雇用政策は、「中央政府の基本的な義務」と考えられてきた。その背景には、「いかなる地域や経済分野に身をおこうとも、権利は平等に享受されるべき」という考え方が存在する。さらに、雇用問題では「国際競争力の維持・強化」という課題に重点が置かれてきたこともあり、「地域雇用」という概念は、あまり一般的でなく、また定義も曖昧とされる。

しかし、1980年代以降の地方分権化政策の推進(注1)と、失業問題の深刻化に伴い、雇用政策における地方の重要性の認識も高まりをみせ、地方における雇用計画の支援策も発表された。例えば、「地方と地域雇用イニシアティブ」、「長期失業者のための低賃金パートタイム」、「地域雇用イニシアティブのための特別基金」、「社会参加のための地方自治体による計画」、「教育訓練のための地域計画(注2)」――などが代表的である。最近では、「新サービス:青年・雇用プログラム」、「ワークシェアリングの普及」、「地域財政援助」、「産業クラスターの創設(注3)」といった新たな手段も開発されている。

特に、1997年に開始された「新サービス:青年・雇用プログラム」は、非常に興味深い。このプログラムは、雇用への補助金という原理で運営される伝統的な施策であるが、それまで充足されなかったニーズにこたえる、新しい活動・就労を創出した。対象は、16歳から30歳未満の青年失業者。対象者には最低賃金が支払われ、対象者の国民保険料は国が賄う。プログラム終了後には継続的な社会参加が実現できるように、対象者は特定の職業訓練を受けなければならない。

当初の目標は、公共部門及び関連部門で35万人、民間部門で35万人の、合計70万人の雇用創出だった。利潤追求を第一とする民間部門は、プログラム開始当初から参加しなかったが、公共部門では、目標の35万人の雇用が創出された(注4)。基本的に、5年間の労働契約期間だが、契約途中で一般雇用を確保して、当プログラムから退出する者も多いとされる。また、期間終了後に対象者の3分の2が常勤の職に就いてる。

この施策は、中央集権的であり、厳密には地域雇用制度と呼ぶことはできない。しかし、実施にあたり、地方公共職業安定所(LPES)と地方政府が協同で、新たなニーズについての調査や問題を解決してきた。創出された雇用も大半が身近なサービス業であり、地域パートナーシップ及び政府、団体が主体となって創出したものである。こうした点から、2002年の「雇用のための国家行動計画(NAPE)」では、当プログラムが雇用政策の地方化の先陣を切るものとして紹介された。なお、当プログラムは、2002年12月末をもって終了する予定であったが、2008年末までの継続が決定した(2001年6月)。

雇用政策において、未だ中央集権的要素が強く残るフランスだが、近年、EU拡大を背景に、国境を越えた地域間での競争関係が生じており、地方サイドからも国に依存しない「地域の自主的な動き」が出てきている。こうしたなか、地域雇用開発のあり方についても、議論が活発化していくことが予想される。

※本稿の内容は、労働政策研究・研修機構が2月9日、10日に開催した「各国の地域雇用開発研究ワークショップ」におけるザビエル・グレフパリ第一パンテオン・ソルボンヌ大学教授の講演及び『失業の社会学-フランスにおける失業との闘い-』(ディディエ・ドマジエール著/都留民子訳法律文化社、2002年)を参考に執筆した。

2005年3月 フォーカス: 地域雇用政策

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