メンタルヘルス:イギリス
メンタルヘルス事情
英国安全衛生庁(HSE)は職業性ストレスを「過度のプレッシャーあるいは本人の能力を超えた要求に対する有害反応」と定義し、企業は適切なストレス・リスク管理策を取るべきだとしている。しかし2004年11月に導入された「職業性ストレスのレベルを測定するための管理標準」には法的拘束力がなく、産業医の設置も任意であるなど、労働者の職業性ストレス管理は個々の使用者に委ねられているのが現状だ。(注1)
HSEの統計によれば、職業性ストレス等の精神疾病による1年当たりの損失日数は約1300万日、社会的コストは37億ポンドにものぼると見られている。(注2)また精神疾病の悪化は失業につながりやすく、働いていた人が疾病・障害のために働けなくなった際に給付される就労不能給付の受給者数が増加している原因のひとつと考えられている。現在、同給付の受給者総数は270万人。年間費用は77億ポンドに達している。低失業率下にもかかわらず、増加している同給付を財政当局は問題視しており、改正方向で準備がすすめられている。こうした状況は、使用者が労働者のストレスと心の病の原因に取り組む措置を十分に講じてこなかったことが原因と考えられている。
メンタル・ヘルスのリスクが高い職業は保安、医療、教育
精神疾病を悪化させる因子には、単純作業によるプレッシャー、人間関係のトラブル、トラウマを伴う出来事、いじめやセクシャル・ハラスメントなどがある。職業との関連を見ると兵士や開業医など保安、医療、教育関連の職業で精神疾病の発症率が極めて高い(図1)。これらの職業は職場での暴力を受けるリスクも高いことから(図2)、フィジカル・ヘルス面でのリスクも高く、安全衛生上の課題が多い職業といえる。
図1:精神疾病の多い職業
図2:職場での暴力を受けることが多い職業
注
- わが国では、50人以上の企業は非常勤の産業医を選任することが労働安全衛生法で義務付けられている
- Occupational Health Statistics Bulletin 2003/04
出典
- 参考資料は、Occupational Health Statistics Bulletin 2003/04(国際安全衛生センター)
参考資料
- 英国安全評議会(British Safety Council)発行「SAFETY MANAGEMENT」2004年10月号 仮訳 国際安全衛生センター)
2005年11月 フォーカス: メンタルヘルス
- EU: 職業性ストレスに関する取り組み
- イギリス: メンタルヘルス事情
- アメリカ: 増大する職場のストレス
- ドイツ: ドイツにおける「労働とストレス」-長時間労働による影響を論議
- フランス: 「モラル・ハラスメント」規制を法制化
関連情報
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