労働運動の現状:ドイツ
組織人員の減少止まらず

  • カテゴリー:労使関係
  • フォーカス:2004年12月

ナショナルセンターDGBの現状

ドイツ労働運動の中心は、DGB(ドイツ労働総同盟)が担っており、現在の組織人員(2003年)は約736万3000人である。このほか、全国組織としてDBB(ドイツ官吏同盟、約125万8000人)およびCGB(ドイツ・キリスト教労組連盟、約29万8000人)があり、これらを合計した数字は約891万9000人で、労働力人口(3617万2000人)で割った組織率は24.7%となる。

組織人員はドイツ統一以降、一貫して低下傾向にある。DGBは、東西ドイツ統一後の1991年に1180万人を経験して以降、2003年までで37.6%の減少を記録したことになる。統一後はとくに東独地域の景気低迷と企業再編による雇用者数の減少が響いていた。最近になっても、ドイツ全体の景気低迷と産業構造の変化、企業のグローバル化への対応などの要因により、低下に歯止めがかからない状態にある。1999年に約803万7000人だった人員は、2000年に約777万3000人と800万人台を割り、2001年にIT関連の好況で一時的に微増したものの、2002年に約770万人と再び減少し、翌年にかけて下げ幅を広げている。

DGBは現在8つの産業別労組で構成されている。統一後しばらくは16の産別が存在したが、組織人員の減少と、90年代から現在にかけて続いた労働条件決定の産業別レベルから個別企業レベルへの移行の流れは、産別労組の運営の合理化と経費削減を余儀なくさせた。その結果、産別再編が加速し、2001年には、公務・運輸・交通労組(OTV)、商業・銀行・保険労組(HBV)、郵便労組(DPG)、メディア労組(IG-Medien)のDGB傘下4産別と、それまでDGBに加盟していなかったドイツ職員労組(DAG)が合併し、当時で300万人以上の人員を有する巨大産別、統一サービス産業労組(Ver.di)が誕生している。Ver.diは現在もDGBの最大産別であり(約261万4000人、2003年)、DGB現会長のミヒャエル・ゾマー氏は同労組の出身だ。Ver.di誕生まで最大であった金属産業労組(IG-Metall)も、2003年現在で約252万5000人の組合員がおり、この2つの産別の存在感が際立っている。

DGBウェブサイト新しいウィンドウへによる。数字は組合員数、DGB内組合員比率。2003年現在。

労使関係の特徴

労働協約上の平均の賃上げ率は、2003年に2.4%だった。最近では、2000年2.4%、2001年2.1%、2002年2.6%と推移しており、消費者物価指数(欧州委員会によれば2000年から2003年まで1~1.6%の間の水準で推移)以上の水準を保っている。ただし、2004年に入り、フォルクスワーゲンの社内労働協約交渉(同社は金属産業協約とは別個に産別であるIGメタルと交渉する)の結果が長期雇用保障と引き換えに賃上げゼロに終わった(11月)ように、90年代までの賃上げと労働時間短縮を追求してきた労組にとっては、方針の再構築が課題となっている。

労働協約の適用率(2003年)は、企業数で見ると、産業別協約適用が42%、同協約に基づく水準を適用している企業が25%、同協約を適用していない企業が33%である。これを従業員ベースで見ると、産業別協約適用が67%、同協約に基づく水準が適用されている従業員が17%、同協約が適用されていない従業員が16%となる。企業ベースと従業員ベースの適用率の差異は、企業規模が大きいほど協約適用率が高いために生じている。なお、2000年時点の適用率は、企業ベースで43.9%、従業員ベースで67.3%であり、現在まで微減しているものの目立った差はない。


2004年12月 フォーカス: 労働運動の現状

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