韓国の非正規労働者の規模と特徴
 ―韓国労働研究院レポートより

カテゴリー:非正規雇用労働条件・就業環境多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2020年4月

韓国労働研究院(KLI)は2020年1月、「2019年の非正規職の規模と特徴:2019年8月『経済活動人口調査部調査』を中心に」と題するレポートを発表した。それによると、2019年8月時点の非正規労働者数は748万人で、前年比87万人増加した。正規労働者と比べた非正規労働者の相対賃金は68.9の水準であった。平均時給が最低賃金水準に満たない労働者数は339万人で、前年比28万人(16.5%)増加した。同レポートの概要を紹介する。

非正規労働者の割合は賃金労働者の36.4%

韓国統計庁の『経済活動人口調査、雇用形態別付加調査』は、非正規労働者を雇用形態別(一時的労働者、非典型労働者、時間制労働者)に分類し、毎年8月時点の状況を調査している。

一時的労働者は、労働契約期間を定めた労働者(期間制労働者)、労働契約期間を定めていないが反復更新で働き続けることができる労働者(反復更新)、非自発的理由で継続勤務を期待できない労働者(期待不可)に区分される。

非典型労働者は、派遣労働者、請負労働者、特殊形態労働従事者(経済的には事業者に従属的な地位にあるが業務遂行においては自律性を有する労働者)、家庭内労働者、日雇い労働者に区分される。

時間制労働者は、所定労働時間が同一事業所で同種の業務を行う労働者より短い労働者である(同種の業務を行う労働者がいない場合は週労働時間が36時間未満の労働者)。

韓国の賃金労働者全体に占める非正規労働者の割合は2006年以降増減を繰り返し、2014年に32.2%まで低下した後、33%程度の水準で横ばいが続いた。2019年8月時点の非正規労働者数は748万1,000人(36.4%)で、前年比86万7,000人増加した(図1)。これについて、統計庁は、2019年調査から既存の質問項目に加えて、賃金労働者の従業上の地位に関するILOの分類基準に合わせて質問項目を追加して調査を行った結果、雇用予想期間などの期間基準が強化され、経済活動人口調査でこれまで補足されなかった期間制労働者が大幅に増加した影響によるものと説明している。

図1:非正規雇用労働者の規模と割合の推移 (単位:千人、%)
図1:画像

出所:統計庁「経済活動人口調査雇用形態別付加調査」各年8月時点

期間制労働者数が大幅に増加

統計庁が発表する非正規労働者の雇用形態別規模は相互に排他的ではなく、各非正規労働者がいくつかの雇用形態別類型の性格を合わせ持つため、重複集計されている。

2019年8月時点の非正規労働者数を雇用形態別にみると、一時的労働者が478万5,000人で最も多い。一時的労働者は前年より96万2,000人増加し、そのうち期間制労働者の増加数が79万5,000人でその大半を占めている(表1)。

非典型労働者は204万5,000人(前年比2万6,000人減)で、2011年以降減少傾向にある。非典型労働者の内訳は、日雇い労働者(74万8,000人)、請負労働者(61万5,000人)、特殊形態労働従事者(52万8,000人)、派遣労働者(18万2,000人)、家庭内労働者(4万6,000人)の順に多い。

時間制労働者は315万6,000人(前年比44万7,000人増)で継続的に増加している。

表1:非正規労働者の雇用形態別規模及び増減の推移
表1:画像

注:雇用形態別の非正規労働者(一時的、時間制、非典型)の規模と増減は類型間の重複があるため、合計が一致しない。

出所:統計庁「経済活動人口調査雇用形態別付加調査」、各年8月時点

非典型労働者の正規雇用と比べた相対賃金水準が上昇

2019年の賃金労働者の月平均賃金は、264万ウォンで前年比3.3%増加した。正規労働者と非正規労働者の月平均賃金は、それぞれ317万ウォン、173万ウォンで、双方とも前年比5.2%増加した。正規労働者の賃金を100.0とした場合の非正規労働者の相対賃金水準は前年と同じ54.6であった。しかし、通常の労働時間を考慮した賃金を時給でみると、正規労働者の時給(17,225ウォン)が前年より5.4%増加する間に、非正規労働者の時給(11,863ウォン)は6.9%増加し、相対賃金水準は68.9と2007年(71.1)以来最も高い数値を記録した。

雇用形態別の時給水準をみると、2019年の正規労働者と比べた一時的労働者の相対賃金水準は69.3で前年の71.3より低下した(表2)。これは、2019年の「反復更新」の時給(13,741ウォン)が2018年(14,589ウォン)より5.8%減少した影響による。期間制労働者の時給は11,861ウォン(2.9%増)で前年の増加幅(7.5%)より鈍化した。

非典型労働者は、派遣労働者、請負労働者、特殊形態労働従事者の賃金水準が改善し、相対賃金水準が前年の62.7から65.3に上昇した。特に特殊形態労働従事者の賃金(13,076ウォン)は前年比13.2%増加した。

時間制労働者の相対賃金水準は、2012年の53.5まで減少して以降、緩やかに改善し、2019年は64.3まで上昇した。

表2:非正規労働者の雇用形態別時間当たり相対賃金水準の推移
表2:画像
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注:正規労働者の賃金を100とした場合の雇用形態別非正規労働者の時間当たり相対賃金水準。

出所:統計庁「経済活動人口調査雇用形態別付加調査」、各年8月時点

最低賃金労働者及び低賃金労働者の割合が減少

非正規雇用労働者の時給水準が全体的に改善されたのは、最低賃金引き上げ率が2018年の16.4%に続いて2019年も10.9%と非常に高かった影響によるものとみられる。

月の平均賃金を平均労働時間で割った時給が最低賃金水準に満たない労働者数は339万人で、前年比28万人(16.5%)増加した(表3)。

これに伴い、時給基準で中位所得の3分の2未満の低賃金労働者の割合が前年に続いて減少した。2019年の低賃金労働者数は334万5,000人(16.3%)で、前年比25万人(1.7%ポイント)減少した。正規労働者に占める低賃金労働者の割合は前年の10.1%から7.9%に、非正規労働者に占める低賃金労働者の割合は同34%から30.9%にそれぞれ減少した。低賃金労働者の割合を雇用形態別にみると、一時的労働者は前年の29.8%から27.9%に、時間制労働者は同49.6%から47.3%に、非典型労働者は同32.7%から29.3%にそれぞれ減少した。

表3:雇用形態別最低賃金未満の労働者及び低賃金労働者の分布
表3:画像

注:()内は、低賃金及び最低賃金未満の労働者の割合

出所:統計庁「経済活動人口調査雇用形態別付加調査」、各年8月時点

参考

  • 韓国労働研究院(2020)「2019年の非正規雇用労働者の規模と特徴:2019年8月「経済活動人口調査部調査」を中心に」『月刊労働レビュー2020年1月号』

参考レート

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